感想 


64.ペンと剣
 2012/03/08 - 辛口感想
ジャンル:現代群像
長さ:短編連作(連載中)

「オリーブ・ビリーブ」まで拝読いたしました。


いいかげんなあらすじ:
とあるアパートに暮らす人々の日常。
しがない作家が締め切りに追われてたり、警察官が真面目に仕事をしていたり、フリーターたちがアルバイトに行ったり、一般人が非日常に足を踏み込んでしまったり……。


 クセのない文章で読みやすい
 特化している要素がない
 作品の「ウリ」がわからない
 ストーリーやキャラクターにおもしろみがない






日本のどこかにありそうな、ごく普通の町に暮らす、ごく普通の人々の物語集です。
……と見せかけて、たまにファンタジーっぽいエピソードもあります。

1編1編が短く、ほのぼのとした雰囲気なので、ちょっとした空き時間に読むのにちょうどよかったです。
また、文章も整っていて、非常に読みやすかったです。
しかし、特化している要素がないため、読みやすいだけの作品でもありました。


 文章が整理されていて読みやすい

1つ1つの文章が短く、言葉選びも平易で、変なクセがありません。
文章の構成もよく整理されています。
そのため、内容が素直に頭に入ってきて、とても読みやすい文章でした。

文章が中央寄せ(センタリング)されていたため、ポエムっぽい文体なのかなぁ……と推測していましたが、
実際に読んでみるとなかなかカッチリとした文体で、少しおどろきました。
かといって、文体が硬すぎるわけでもありません。
ほどほどにやわらかく、物語によく合っている文体です。


 特化している要素がない

文章は読みやすいのですが、ただ読みやすいだけで、内容自体は退屈でした。
特化している要素がないため、作品に魅力をまったく感じなかったのです。

ストーリーに起伏がない、会話や小ネタにキレがない、設定に目新しさがない、文章による情緒や雰囲気もない……。
と、惹きつけられる点がまったくありませんでした。

「このキャラを書きたい!」
「気の利いた会話を書いてみたい!」
「町のぬるい空気を表現してみたい!」
「日常のなかにひそむ非日常を書いてみたい!」
……など、いい意味での自己顕示欲さえ感じられないため、
この作品でなにを楽しみ、なにを味わえばいいのかわからないのです。
そのため、読んでいて退屈だったのだと考えられます。


 作品の「ウリ」がわからない

「とある町の住人達の日常やたまに非日常」を書きたいのは、なんとなくわかります。
が、書きたいものをそのまま書いていて、書いた順番に並べているだけのようで、
なにがこの作品の「ウリ」でなのかわかりませんでした。
読み手に「なにを見せていきたいのか」がつかめないせいで、読んでいて響くものがなかったのです。

また、全体的に雑多で茫洋とした印象を受けました。
この作品のキモは、ほのぼのとした日常なのか、コメディチックな話なのか、ちょっと真面目な話なのか、それとも日常と非日常の境目なのか……。
これらの要素が融合した作品は多々存在しますが、
この作品の場合、「読み手に見せたい・示したいもの」が不明なため、まとまりがありませんでした。


 ストーリーやキャラクターにおもしろみがない

40編以上の短編があり、登場人物も10人以上いるのに、ピンとくるエピソードやキャラクターが存在しませんでした。

エピソードはどれもどうということがなさすぎて、読んだあと特に残るものがありません。
ありがちな話で、ひねりもないため、意識に引っかからないのです。
作者さまがありふれたエピソードを書きたいにとしても、文章が事務的で描写が最低限なため、
その場の空気がわからず、共感できないのです。

登場人物については、内面に踏み込んだ描写が少なかったり、その人物の魅力が表現されているエピソードがないため、
まったく興味がわきませんでした。
また、登場人物がみんな優等生的で、おもしろみに欠けていました。



本編読了後に設定を覗いてみたのですが、町の細かいところまで考えられていて、
「これが本編中でも書かれていたら、だいぶイメージが膨らんだのに……」と惜しい気持ちでいっぱいになりました。

設定を読んだだけでも、幼いころに短期間住んでいた内陸の小さな市が懐かしくなりました。
舞台の具体度をちょっと上げるだけで、物語そっちのけで舞台に共感する読み手も出てくるかもしれません。

文章自体に難はないので、少しの工夫で一気に魅力的になりそうな作品です。


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