感想 


63.1/5
 2011/12/18 - 辛口感想
ジャンル:SFアクション
長さ:長編(完結)


いいかげんなあらすじ:
防御壁で囲まれた、出入りのできない都市。
"奪還屋"の青年ルベルはマフィアを憎みながらも、裏世界で生きる糧を得ていた。
ルベルは商売敵である"回収屋"のサブラージと、小競り合いをしながら依頼をこなしていく内に、都市の真実を知ってしまい……。


 次の事件の前フリができている
 世界観がよくわからない
 物語に説得力がない
 文章が雑





スタイリッシュな雰囲気の、やや退廃的な気もしなくもないSFアクションものです。
裏社会に焦点が当てられているのでダーティなお話……と思いきや、なかなかさっぱりとした物語でした。

各イベントで次の展開の前フリがされているため、物語の流れがスムーズです。
そのため、アクションものらしいスピード感がありました。

一方で、背景、人物、構成、文章等、あらゆる要素が十分に練られていないせいで、
穴だらけでスカスカな印象を受けました。


 事件の前フリができている

先に起こった事件の中で、次の事件に繋がっていく事実やアイテムが示されています。
これらの事実やアイテムが次の事件への前フリとなっているため、スムーズに物語が進んでいきます。

イベント同士の繋がりが滑らかなため、物語のスピード感も保たれています。
サクサクと次のイベントに移っていくため、あっというまにラストまで読めました。

ただし、伏線が弱かったり、不十分だったりする箇所も多々見られました。
たとえば、サブラージがユアンのクローンであることの一番の伏線である
ルベルとサブラージと瞳の色が明かされるタイミングが遅すぎます。
また、都市内の人間のほとんどが人造人間であることに関する伏線の不足が特に気になりました。


 世界観がよくわからない

この作品をサクサクと読めた理由には、情報量の少なさもあります。
しかし、ストーリーが理解できる程度の情報量はあるのですが、世界観に関する情報が不足しており、
背景のイメージがまったくわきませんでした。

ある程度は世界観に触れられてはいますが、出てくる情報が断片的なせいで、
いったいどんな場所なのか、風景も社会の仕組みも具体的に見えてきません。
ざっくりとした全体的な舞台説明、物語に関わってくる細かな要素の説明、両方ともかけているのです。

社会制度や裏社会の構造が不明なため、物語の肝であるマフィア絡みの事件に説得力がありません。
また、依頼や事件がどのくらい大変なのかわからないため、ハラハラドキドキしませんでした。


 物語に説得力がない

登場人物や事件について全然練られていないため、
なにもかもが行き当たりばったりで、物語そのものに説得力がありませんでした。

まず、登場人物については、ルベルもサブラージも“プロ”には見えません。
ふたりとも一般人並みに隙ばかりですし、戦い方も非効率的です。
敵も妙にマヌケで、ご都合主義な印象を受けました。

また、事件に関しては「問題が解決した」という実感がわかなくて、つまらなかったです。
誘拐事件では、なんでマフィアが少女を誘拐したのか、まったく明かされていません。
スクールジャック事件では、敵の都合で敵が撤退してしまうため、主人公が全然活躍していません。
そのため、物語にメリハリがありませんでした。


 文章が雑

文章の雑さも、作品がスカスカな印象になってしまった一因だと考えられます。

まず、言葉の誤用の多さが気になりました。
中には、「学校を占拠すること」を「ハイジャック(飛行機を乗っ取ること、という意味)」と表記していたりと、
読んでいて頭を抱えたくなる誤用もありました。

また、文章同士が微妙に繋がっているようでつながっていない箇所も、ちらほら存在しました。
雰囲気でなんとなく内容は理解できますが、理解するまでに若干時間がかかるため、頭がモヤモヤとして疲れました。

さらに、なにについて語っているのかよくわからない箇所も、少なくありません。
主語や目的語の不足、あるいは指示語の多用が原因だと考えられます。



終盤はかなり駆け足で、むりやり話をまとめたような印象を受けたりと、上述した以外にも欠点は多々あります。

しかし、それなりに長さのある作品を最後まで書き上げたられている点で、高く評価できる作品です。
市販の小説も含め、世の中には未完の作品が多すぎます……。
また、完結作品のほうが感想を書きやすいので、私事ですがとてもありがたくもありました。

単行本1冊程度の作品を完結させる力とモチベーションがあるので、今後の成長が楽しみです。


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