感想 ▽
５９．ＮＧダッシュ！
2011/08/08 - 辛口感想長さ：長編（連載中）
改稿前掲載分＆改稿後第一章03まで拝読いたしました。
いいかげんなあらすじ：
最愛の姉を亡くして以来、現実を受け入れられていない21歳のフリーター・小暮卓也。
上京して一人暮らしをしている卓也の元に、婚約者の妹である千歌が押しかけて来て、一緒に暮らすことになるが……。
テンポがよくて読みやすい
シリアスな場面がやや駆け足 登場人物に少し感情移入しづらい
改稿前のほうが読みやすい軽快な青春小説です。
主人公は成人済みですが、いい意味でライトノベル寄りな印象です。
テンポがよくて読みやすい文章と、押しかけ少女・千歌の持つ妙な勢いのおかげで、サクサクと読み進められました。
しかし、シリアスなシーンの書込みが不足気味だったせいで、展開がやや駆け足になっていました。
同時に、登場人物に少し感情移入しにくくもありました。
テンポがよくて読みやすい文章が整っていてとても読みやすいので、気持ちいいくらいサクサクと読める作品です。
まず、短文主体で書かれているため、パッと見で文意を汲みやすく、どんどん内容が頭に入ってきました。
また、文と文とのつながりがよく、文章の流れが自然で、読んでいて引っかかる箇所がありません。
そのため、文章のテンポがすごくいいのです。
さらに、行動的な千歌のキャラクターも、作品によい影響を与えていると考えられます。
いろいろな意味で停滞気味な主人公を巻き込む勢いが、千歌の台詞にも行動にも存在しています。
おかげで、千歌の勢いに流されているうちに、どんどん作品を読み進めることができました。
シリアスな場面がやや駆け足とにかくテンポのいい作品なのですが、アップテンポすぎて、ところどころ駆け足な印象を受けました。
シリアスなシーンや重要な話・決断をするシーンで、場の空気の変化や主人公の心の動きについて、書込みが不足しているのです。
コメディ寄りなシーンでも、しんみりとしたシーンでも、同じようなノリの文章で、メリハリがありません。
そのため、登場人物との間に温度差を感じてしまったり、場の雰囲気の移り変わりについていけないことがありました。
シリアスシーンについて描写するには、軽すぎる文章なのかもしれません。
登場人物に少し感情移入しづらい主人公はシスコンだし、千歌は勢いに溢れているし……と、登場人物のキャラは立っています。
しかし、登場人物に少し感情移入しづらい面がありました。
原因としては、まず、シリアスな場面での心理描写の不足が挙げられます。
先ほど述べたとおり、登場人物との間に温度差を感じてしまうがために、感情移入が難しくなってしまっているのです。
また、主人公や千歌、それぞれの日常が見えてこなかったた点も、感情移入しにくかった原因として考えられます。
主人公は千歌以外（バイト先の人間）とどう関わっているのかわからないし、千歌は学校に通っているのかさえ不明です。
主役の生活の様子が立体的に描かれていないため、若干の「作り物っぽさ」を感じてしまったのでしょう。
改稿前のほうが読みやすい上述した3点は改稿前の作品の感想です。
改稿後の作品の感想も改稿前とおおむね同じですが、個人的には改稿前のほうが読みやすくて好きです。
改稿後の作品は千歌の目的がはっきりと明かされていて、話の筋がわかりやすくなっています。
しかし、1〜2章かけて説明するべき内容が、たった3ページに詰め込まれているため、情報量の多さに頭がついていけませんでした。
また、改稿前も改稿後も、冒頭部（千歌が登場するまで）がぱっとしない印象でした。
「今までの出来事」をかいつまんで説明しているせいで、文章があらすじっぽくなってしまっているのです。
また、特にインパクトがある内容でもないため、やや話の掴みが弱いかもしれません。
まだ序盤でストーリーに言及しづらいので、とりあえず重箱の隅をつついてみました。
カラッとした作風と洗練された文章とが相まって、一番の感想は「とにかく読みやすい」です。
軽快なだけではなく各要素に安定感もあるので、安心して読める作品です。