感想 


57.神様のチェス
 2011/07/04 - 辛口感想
ジャンル:現代青春
長さ:長編(連載中)

19ページ目まで読ませていただきました。


いいかげんなあらすじ:
壊れた母親と暮らす男子高校生・トワ。
ある夜、トワはコンビニで不思議な少年・キサと言葉を交わし、ビールをもらう。
キサとの出会いがきっかけで、誰にも関わらずに生きてきたトワの意識は変化し始める……。


 心理描写がていねい
 構成がしっかりとしている
 主人公の目的が不明
 状況が停滞気味





暗いけれども暗すぎない青春小説です。
全体的に荒んだ雰囲気なので、好みが別れそうな印象。
屈折した青春モノが大好きなので、私は楽しめました。

青春モノらしく、主人公の心の動きがとてもていねいに描かれています。
また、構成がしっかりしているので、安心して読める作品です。
ただ、主人公の願望がはっきりせず、さらに、状況が停滞気味なため、あまり続きを読みたいとは思えませんでした。


 心理描写がていねい

設定や出来事に目新しさはありませんが、とにかく心理描写がていねいなので、読みごたえがありました。
主人公の繊細な心の動きが自然に、かつしっかりと描かれていているため、物語に説得力もあります。

イベントそのものは地味ですが、主人公のテンションの上がり下がりによって、ストーリーにメリハリが生じています。
そのため、日常(母親)と非日常(キサ)との間で揺れる主人公の心情を追っていくうちに、あっという間に掲載分を読んでしまいました。


 構成がしっかりとしている

心理描写がていねいなので、「寂しい」等の主人公の欠落が、具体的に示されています。
また、「キサと関わることによって、主人公が変わってゆく」という物語の軸も、はっきりとしています。
そのため、物語の構成がしっかりとしていて、安心して主人公の心情の変化を追いかけていくことができました。

日常と非日常の対比構造も秀逸です。
母親との生活は、暗くドロドロとしています。
一方で、キサたちとの交流はさわやかで楽しげに描かれています。
このように、日常と非日常が互いの暗さと明るさを引き立て合っていたおかげで、物語がよりわかりやすく、より魅力的になっていました。


 主人公の目的が不明

この作品には、「寂しさを抱えている主人公が、キサと関わることで変わっていく」という、しっかりとした骨組みがあります。
しかし、主人公が最終的に「どうなりたいのか」がわかりませんでした。
つまり、主人公の目的が不明なのです。
そのため、主人公がどのように変化していくのか、最後まで見届けてやろうという気持ちになれませんでした。

また、主人公がキサや仁輔に引っぱってもらっているばかりで、自ら行動していない点が気になりました。
主人公が明確な目的をもって積極的に動かないせいで、「この行為の結果はどうなるのか?」というドキドキ感に乏しかったです。


 状況が停滞気味

続きにあまり興味がもてなかった原因としては、主人公の置かれている状況が停滞気味だった点もあげられます。
不安要因である母親の目立った暴走はたった一回だけで、刺激が足りません。
せっかくの日常・非日常の対比構造を、十分に生かすことができていないのです。

また、キサも仁輔も主人公から心理的に離れていく気配がないため、状況が安定してしまっています。
主人公に揺さぶりをかけられていないがために、読んでいてハラハラしないのです。
そのせいで、「キサたちがいれば、主人公はもう大丈夫だ」と思えてしまって、続きを読む必要性が感じられませんでした。


続きが気にならないといいつつも、キサによって主人公が変わっていく過程は、とても魅力的でした。
読点の少なさに引っかかりましたが、現状でも十分に楽しめます。

暗い青春モノが好きな方に、安心してオススメできる作品です。


 |  | 




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -