感想 


45.ほほえみ
 2010/12/06 - 辛口感想
ジャンル:歴史小説
長さ:短編


いいかげんなあらすじ:
暮れゆく二月の三草山。
十四歳の平師盛は、兄・資盛の呼びかけにも応えず、物思いにふけっていた。
その夜、平氏の陣は源氏軍の襲撃を受ける。
師盛は従者たちと、なんとか一ノ口の平氏本陣に合流するが……。


人物や戦の生々しさに欠けるせいか、あっさりとしすぎていて味気ないです。
また、物語の焦点が主役に定められていないせいで、散漫な印象を受けました。
文章はとても読みやすく、すんなりと作品を読破できました。





硬派な源平ものです。
歴史系の作品の感想で、「日本史苦手、古典苦手」と毎度毎度書いているのですが、この作品はあっさりと読めました。

ですが、少々あっさりとしすぎていて、味気なかった面も否めません。
「やっぱり悲劇的な結末なのかぁ」くらいの感想しか残りませんでした。
読みやすくてわかりやすい作品なので、特に不満はありません。
ですが、満足しているわけでもありません。

奇をてらわないストーリーなので、おそらく、登場人物の生き様や悲劇性を味わうタイプの作品なのでしょう。
しかし、情緒や人間らしさがあまり表現されていないため、心に訴えるものに乏しかったです。

全体的にメリハリに欠け、作者さまのなかにある知識を整理して、ただ書き出しているだけのような印象をしました。
物語をドラマチックにするための演出が、あまりされていないのかもしれません
描写はきれいなのですが、人物にも情景にも、鮮やかさや生々しさが不足しています。

まず、季節感がない、戦場の熱気や汚らしさもない。
要するに、臨場感がないのです。
この原因としては、体感描写の少なさが考えられます。

また、師盛の感情はどこか他人ごとで、従者たちの気持ちもつかめませんでした。
登場人物の人柄があまり見えてこないので、人物が生き生きとしていなかったのでしょう。
師盛の魅力も、いまいちわかりませんでした。
嫌いではありませんが、むやみやたらになよなよとしている印象が強いです。

その人物がどんな人間なのか、他の登場人物に対してどんな感情を抱いているのか。
これらがわかるような、具体的なエピソードがなかったため、登場人物の内面があまり伝わってこなかった可能性があります。

さらに、余分なエピソードを詰め込んでいるせいで、師盛の物語が薄味になってしまっている印象も受けました。
人物の掘り下げが不足している一方で、物語の進行上必要のない情報まで書かれているため、ストーリーの勢いが削がれてしまっている面もあります。

過去の出来事(師盛が兄弟を失っていく過程)や、師盛が直接見たわけではない光景(鵯越での源氏の奇襲)は、個人的にはいらなかったです。
師盛の背景説明が序盤で3ページに渡って続いたせいで、読み進める気力がだいぶ失せてしまいました。


なんだかんだ書きましたが、とにかく読みやすい文章なので、すんなりと読了できました。
歴史ものらしい硬めな文体ですが、歯切れがいいので、頭にスルスルと入ってきます。

また、欠点として「戦の生々しさがない」と挙げましたが、読み手によってはプラスの要素になるかもしれません。
描かれている世界がきれいな分、クセがなくて読みやすくもあるからです。
ハードな描写が苦手な方でも、安心して読めそうな作品です。


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