おまけ
「……ところで、これは?」
未だ元気に点滅する電飾をつついて訊ねると、一期一振は穏やかに微笑んで言った。
「ああ、気付きましたか?」
気付くも何も、この電飾のせいで何度も笑ってしまったんですけど……。
「これはイルミネーションですな!」
「ん?……???えっごめん、何て?」
「おや、ご存知なかったですか?クリスマスにはイルミネーションという、電灯の飾り付けを見るのが恒例だそうで」
「あ、へ、へえ……そう……なんだ……?」
「はい!楽しんでいただけましたか?」
「……う、うん」
「それはよかった」
あのね一期さん、それはイルミネーションじゃないのよ。
そう思ったが、にこにこと笑うわたしの天使に、真実を告げることはできなかった。
しかしなんとか外させることはできないものか。
「ねえ一期さん、これのせいで一期さんが遠いの。もっとくっつきたいな」
「……!こんなもの……!」
「わー!待って待って、引きちぎると危ないから!」
電飾を軽く引っ張って言ってみると、一期一振は優しげな顔立ちに似合わない力で電飾を引きちぎろうとした。一期一振は物腰の割にすぐ腕力で解決しようとする。こいつは刀剣男士なんかじゃない。ゴリラだ。
見上げると、彼は不服そうに口を尖らせていた。
そんなかわいい表情、どこで覚えてきたんだか。
「しかし……!」
「しかしじゃな……わ、こら」
むくれていたはずの一期一振はなぜかわたしの唇にその唇を重ねてきた。
えっほんとなんで……主まだ話してるでしょうが!
「すみません、でも我慢できなくて」
「いや、ちょっ……我慢してください!」
すみませんと言いつつ自由な一期一振は、わたしの話などまるで聞く気がないらしい。
こちらに話す隙を与えるつもりがあるんだかないんだかわからないペースで口付けてくる。
もしかしてこれ、さっきキスしてなんて言ってしまったからか。それで調子に乗っているのか。余計なこと言うんじゃなかった……!
「お嫌ですか」
わたしの顔を見て何を思ったのか、一期一振は感情の読めない声色で言った。
わたしが嫌がっているとは微塵も思っていないような調子である。
「…………嫌」
「えっ……」
少し意地悪をしてやると、一期一振は青ざめて固まってしまった。そういえばこの刀はとても素直で真面目なのだった。かわいそうなことをしてしまったかな。
わたしは前言撤回すべく口を開く。
「じゃないって、わかってるでしょ……」
「主……!」
「わー待って待ってほんとにダメ」
嬉しそうにかがむ一期一振を、手のひら一枚挟んで阻止する。
予定と違うところに唇を着地させる羽目になった一期一振は、不満げにこちらを見ている。正直近すぎてうまくピントが合わないが、不満そうな空気をはっきりと感じる。一期一振はわたしの手のひらに唇を触れあわせたまま、もごもごと不満を口にした。
「な、何故……」
「なぜって……」
「納得できません」
「死にそうだから……」
「はい……?」
わたしの言葉を訝しむように、一期一振は一度離れてわたしを見下ろした。
彼の疑いの目から、さらなる説明を加えねばならないことを悟る。口にする前から頬が熱い。
「どきどきして死にそうだから!だからダメなの!」
「…………あ、」
「あ?」
半ば自棄になって言うと、一期一振はぱくぱくと口を開閉して、やっとのことで一音のみ発することに成功した。
あ?あ……何?
「あんまりかわいいことを言わんでください……」
蚊の鳴くような声で言った一期一振は、湯気でも出そうなほど真っ赤になって片手で顔を覆ってしまった。指の隙間からこちらを見る金色の瞳がうっすら濡れている。
柳眉をハの字にして、耳まで真っ赤に染めた彼は見ていてかわいそうなほどである。
そんな一期一振の様子を見て、わたしは一周回って冷静になっていた。
一期一振のこんな顔、初めて見たかもしれない。
物珍しさからまじまじと眺めていると、不意に彼の大きな手がわたしの目元を覆ってしまった。
真っ暗な視界に、彼の少し上ずった声だけが響く。
「み、見ないでくださいっ!」
どうしよう。わたしの一期一振がこんなにかわいい。
20161224
一期一振はかわいい。
一期一振のことはゴリラともスケベとも思ってるけど推したいのはロイヤルピュア。大事なことなのでもう一度言います。ロイヤルピュア一期一振尊い。
二度あることは三度ある。
またまた勢い余った
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[mokuji]
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