05




「八尋。まだ時間大丈夫か」

「…はい。6時に母が起きるから、それまでなら」

「そうか」




先輩はパカリと携帯を開く。




「今、1時30分」

「…じゃあまだ大丈夫、です」




こんな時間に外を出歩いていることは、私にとっては非日常。

その隣を先輩が歩いているなんて、昨日までは考えもしなかった。ただ会いたくて苦しくて泣いていたから。


でもさっきの暴走行為を目の当たりにして、私の気持ちは少しざわついていた。

警察だって動いてしまうような集団に身を置く人なのだ、先輩は。




「悪かったな。無理言って呼び出して」




私の思考を遮るように、先輩が口を開く。

その言葉に私は、反射的にぶんぶんと首を横に振っていた。

頭の中でごちゃごちゃと考えを巡らせている割には、先輩と一緒に居られることの嬉しさの方が勝っているらしい。






「八尋に時間あるなら…もうちょっと、俺と一緒に居て」

「………っ、」




先輩の低い声が、小さく闇夜に溶けた。

先輩は自転車を止めて、横目で私をチラリと見る。


私はもちろん、間を開けることなく、頷いていた。





2011/04/30




[ 40/51 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -