05
「八尋。まだ時間大丈夫か」
「…はい。6時に母が起きるから、それまでなら」
「そうか」
先輩はパカリと携帯を開く。
「今、1時30分」
「…じゃあまだ大丈夫、です」
こんな時間に外を出歩いていることは、私にとっては非日常。
その隣を先輩が歩いているなんて、昨日までは考えもしなかった。ただ会いたくて苦しくて泣いていたから。
でもさっきの暴走行為を目の当たりにして、私の気持ちは少しざわついていた。
警察だって動いてしまうような集団に身を置く人なのだ、先輩は。
「悪かったな。無理言って呼び出して」
私の思考を遮るように、先輩が口を開く。
その言葉に私は、反射的にぶんぶんと首を横に振っていた。
頭の中でごちゃごちゃと考えを巡らせている割には、先輩と一緒に居られることの嬉しさの方が勝っているらしい。
「八尋に時間あるなら…もうちょっと、俺と一緒に居て」
「………っ、」
先輩の低い声が、小さく闇夜に溶けた。
先輩は自転車を止めて、横目で私をチラリと見る。
私はもちろん、間を開けることなく、頷いていた。
2011/04/30
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