04
たった数十分の間に、爽神会は国道を何往復もした。
ここは転回禁止のはずだから、きっと全ての人が最初の車のように中央分離帯をなぎ倒したのだと思う。
こんな深夜だと言うのに、音を聞きつけたギャラリーもコンビニの周りに増えていた。
そのうち、コンビニの脇の道路からパトカーが一台現れた。
中から出てきたお巡りさんは、コンビニの人に話を聞いていたけれど、爽神会の一団はもう暴走をやめたのか、国道から姿を消していた。
「八尋」
低い声がして振り向く。
安藤先輩は、パトカーやお巡りさんに動じることなく私の元へと歩いてきた。
明らかに悪そうな風貌の先輩に、店員さんもお巡りさんも不審そうな顔をしていたけれど、先輩は気にもせずに停めていた自転車をガコンと動かした。
「帰るぞ」
そして、自転車を手で押しながら私に声をかける。
二人乗りを促さないのは、お巡りさんが居るからなのだろう。
先輩がお巡りさんに掴まってしまわないか心配で、明らかに不審だったのは私のほうだったと思う。
パタパタと先輩の横に駆け寄ると、先輩はすぐに路地へ入った。
「先輩…、お巡りさん、怖くないんですか?」
「別に。暴走してるとこ見られたわけじゃねーから捕まんねぇし」
「…そっか」
路地に入っても、先輩は自転車を押したまま進んだ。
何も言わずに、だけど心なしかゆっくりと歩いて。
先輩は私を呼び出して、こんなものを見せて、何がしたかったのだろう。
訊きたいけれど、先輩の漂わせる空気に、何故だか言葉が出なかった。
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