02
先輩との自転車ドライブはすぐに終了した。
私の家からさほど離れていない、国道沿いのコンビニの前に先輩は自転車を停めた。
「ここに居ろ」
「え?」
「また戻ってくるから、絶対動くなよ」
それだけ言うと、先輩は道路の淵に立った。
すると、車のほとんどいない国道の向こうから、1台の車が走って来た。
闇に溶けるような黒い車体は念入りに磨かれているようで、全ての街灯の光を反射している。それに加えて、正面のライトはなぜか蒼く、尋常じゃないくらいに明るく点灯している。
車は、先輩の前にスッと停まった。
彼は慣れた雰囲気で後部座席のドアを開く。チラリと見えた車内には、あの髪の赤い先輩が乗っていた。
「先輩…!」
私の呼びかけに振り向かないまま、先輩は車に乗り込む。どこ行くんですか、と訊く暇も与えずに、私はコンビニの前に置いてけぼりになってしまった。
そしてドアが閉まった瞬間、車は爆音を立ててものすごいスピードで走りだした。
車はそのままUターン禁止の標識なんてまるで無視し、中央分離帯のゴムポールをなぎ倒して反対の車線へ乗り込んだ。
前方を走っている普通車を煽るように抜き去って、車は見えなくなった。
なんだったの、あれは。
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