04




先輩はあの日、あれだけ派手にやってくれたんだもん。

「何か」なんてあるわけない。


先輩だって本当は、それをわかってそんな言葉をくれているんじゃないだろうか。



先輩の背中が小さくなる。

大好きな背中。ツートーンヘア。

もう近くでは、見られない?




「安藤先輩!」

「……なに」




ポケットに手を突っ込んだ先輩が、私のほうをゆっくり振り向く。

少しだけ鬱陶しそうな表情に、心臓が引っ掻き回されたように苦しくなる。




「私が…、先輩みたいな、悪い子だったら…っ、」




先輩は私を恋愛対象に見てくれましたか?

なんて。


言おうとして、最後まで言えなかった。

冷静に考えなくたって、バカげたことをいって先輩を困らせていることはわかったから。


こんなふうに縋ったら、きっと嫌われる。




「…、ごめ、なさい。なんでも、なかったです…」

「………………」

「ありがとうございました、」




先輩は何も言わなかった。

そのまま、ふいと前を向いて今度は本当に屋上からいなくなった。


取り残されたココは、私の大好きな聖地とは思えないくらいに無機質に感じて。

感情に逆らわずに溢れる涙を、そのまま流し続けた。



喉も、頭も、目も、鼻も、なにより心が。

痛くて痛くて仕方ない。


きっとこのまま、立ち上がれない。





2011/04/05




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