◆小噺置き場◆


発掘小噺(チームイーター近辺の砂柾+朝桐軍団+北&柾)
2013/02/24 12:06

ファイル整理してたらでてきましたw
冒頭の方は脚本っぽく書きたかったのか妙な文章になっております(^_^;)何がしたかった、自分。
ちょうど連載のあたりに流星群が来てて、書きたくなったんだと思います。
いつもより拙いですが、楽しんでいただければ嬉しいです。








それは数日間に亘るチームイーターとの苛烈な戦いの日々からほんの少し遡る、いつものごとくジェニーズにたむろし、くだらない話に花を咲かせる生ぬるい日常の一コマだった。
しかし振り返ってみれば得難いほどに貴重な、幸せな日──。


(皆よりやや遅れた柾木、無言で挨拶代わりに目配せをし、砂原の向かいに腰掛ける。遅いぞ、という朝桐の文句を一睨みで受け流す)
うるせーぞ朝桐。電車が点検だかで遅れてやがったんだヨ。ったく、朝からイラつかせやがる。
あ、砂原、ヤニくれ忘れちまった。
(砂原、うすく微笑んでジッポを差し出す。柾木、顔を寄せる。)
……ん。
で? この今日のバカギリのやかましさはなにが原因だ。っせーな、バカなんだからバカギリなんだろうが。…流星群だ?なんだよこの紙……『朝ちゃんツアーズ第3段、星降る丘で親睦を…』ックク、誰だこれ考えたの。バカ。
ふん…。
(柾木、ふと懐かしそうに目を細める)
よぉ砂原、覚えてるか? …その顔はおめーも思い出してたな?
ああ、あの人に誘われて、初めて流星群観察なんて行く羽目になったんだよなぁ。
すっげー寒かったけど、けっこー楽しかった。…くくくっ、あ? なに笑ってるって、そりゃあの時の砂原ちゃんの失態思い出してたに決まってんだろ?
ああ? ンだよ桑村。別に、ただその日、間ァ悪く熱だしてヨ。来られなかったんだよな、砂原ァ。
(ニヤニヤ笑う柾木に、「バラしんてんじゃねーよ馬鹿」と砂原、悪態を吐く)
へっ、こんな笑える話、言わねーわけねぇだろ。鬼の攪乱かって、北条さんと大笑いしてやったぜ。
…あ? ああ?! ンだてめー砂原 なに抜かしてんだよ、誰がオメーがいなくて寂しそうな顔してなんて…ほ、北条さんが言ってただぁ?! 嘘つくんじゃねぇよバカ、うっせ、顔赤くなんざねえっ。
ったく…。おい、砂原もっかい火ぃ貸せよ……ふぅ。
(一息つこうとしたが、尚も続きを話しだした砂原に柾木が目を剥く。意地悪そうに笑う砂原、かまわず語りだす)
ってコラ砂原、いい加減に…ッ。ああ、あーそうだヨわりーか、その後に風邪引いたよ俺もよぉ! すっげー寒かったんだから仕方ねぇだろ?! いくら北条さんが後ろッから毛布ごと抱きしめてくるんでくれてもあの日の寒さはマジで…。
んだよ瀬下。雲行きが怪しいからヤメロ? ……別に、晴れてんじゃねーかよ。そういう意味じゃねぇ? んだよ、ワケわかんねぇ。…砂原ァ、おめー顔引きつって…なんだテメー、いきなし不機嫌になりやがって。
北条さんと? 何してたって…俺がちゃんと防寒しそこねたからって、後ろから寒くないようにしてくれたんだよ。あ? ああ…胡坐かいた北条さんの足に座るように…い、言わせんな。なんか照れくせぇ。北条さんのやつ、くすぐったりしてきやがってホントイタズラ好きっつーかからかうのが好きっつーか…。
あ、おい砂原…。ンだあの野郎、人が話してる最中にドリンクバーなんざ行きやがって。

(唇を尖らせ不機嫌に舌打ちする柾木。瀬下、胃の辺りを押さえながらため息を吐く。その肩を揺さ振り計画を話す朝桐にキレ、桑村も巻き込んで大騒ぎになる)

…くっく、うるせー奴ら。
(柾木、我関せずとばかりに煙草をふかす。勝手に瀬下の野菜ジュースを飲む柾木のところに、砂原が戻ってくる)

…? なっ、なんだよオメー砂原ァ、なんでこっち座んだヨ。痛って…押すなバカ! わけわかんねーやつだなおめぇもヨ。まぁ別にいいけどな…。
で? 機嫌は直ったのか? 砂原ちゃんよ。クククッ。
(仏頂面の砂原を楽しそうに見ていた柾木。うかがうような表情になり、口を開く)
…よぉ、オメーはのるンか? あのバカの提案に。
俺か……ま、そうだな、オメーが…砂原が行くってんなら付き合ってやってもいいぜ?
(ふいに喧騒が途切れる。朝桐たちの視線にまるで気が付かない二人、ややはにかみながら入りがたい雰囲気を醸し出している)
ま、あんときの仕切りなおしってわけじゃねぇけどな…。…? な、なんだよ、顔近けぇぞテメー。
は!? バイク出すって。バイクで行くんかよ。朝桐たちどうす…。…ああ? なんだよ瀬下…は? 俺たちだけで行ってこいだ? なんだそれ意味わかんねー…って勝手に話すすめんな砂原ァ!


ったくどいつもこいつも。

……ま、悪くは、ねぇか。






結局見に行くのはそれから一週間後。流星群が一番見ごろになる日と決まった。
騒ぐ朝桐に押し切られ砂原と柾木が二人だけで見に行く計画は頓挫したが、はしゃいでいる朝桐に二人も苦笑し、瀬下らも「こんな歳になってと」ぼやいてはいたが、なんだかんだとその計画を楽しみにした。
しかしその約束の日の三日前に、因果が巡り出す。

朝桐が北条を連れてきたのだ。
以前と変わらぬ北条に、砂原も柾木も、心浮き立ち、自然と顔がほころび、やっと戻ってきた日常に胸は幸福で膨らんだ。

しかし、また北条もいっしょに流星群を見られるかもしれないという淡い期待の灯(ともしび)は、北条自身によって吹き消される。

チームイーター。
光嶺への復讐鬼と化した男は、砂原と柾木に選択を突きつけ…。

否応なしに抗争に巻き込まれた彼らに、安息が許されることはなかった。










柾木。

名を呼ばれた気がして、その名前の主である柾木千春は、弾かれたように顔を上げた。
建設途中のビルの中である。細かな砂粒が足元を汚し、粉塵の独特なホコリっぽさが鼻をつく。
仰いだ先には窓になるはずだった四角い穴。殺風景なそこから見えるのは暗い夜の空。
その下の段になっているところに、北条が座っていた。彼は柾木の方を見てすらいなかった。
朝桐の挑発に乗る形で決戦場をここと定めた兄同然の男は、真意も心もサングラスの奥に隠し、静寂のなか浸っている。
彼らの下方――1階に当たる部分には、そのフロアを覆い尽くす無数の黒い塊が蠢いていた。すべて彼ら、北条と久葉の集めた選りすぐりの精鋭たちである。
充満する殺気と戦いへの興奮がぴりぴりと膚を通して伝わってくる。普段であれば同じように血がたぎり高揚する柾木の精神は、しかしいまだ静かなまま。

見下ろしていた視線を北条へと戻す。
彼と柾木との距離は3メートルもない。なのにどうして北条が遠く感じるのだろう。
一歩踏み出したところに見えない壁があるようだ。それは薄くて、透明で、氷のように冷たくて、しかし触れると熱く、越えようとする者を傷つけてくる。
近寄りがたいなんて、北条に対して思ったこともなかったのに。

遠い。


北条さん。


柾木が足を進めると地面の剥き出しのコンクリートがざりっと音を立てた。その音に北条が顔を上げる。
柾木と目が合うと、北条を取り巻く硬質な雰囲気が少し和らいだ気がした。そのことにわずかに安堵して、柾木は微笑んだ。
もう引き返せない、いけるところまでいくのみだ。
この人についていくんだ。昔もそうだった。今もそうだ。
もうすぐここにくるアイツらと、拳を交わす道しか今の自分に示されてなどいないのだから。
朝桐と。……砂原と。
本当なら今日は敵対して相対する日じゃなかったんだな、と、なお感傷じみた苦しさが沸き起こった。それは凍てつく風にさらされ、氷像となり胸を圧迫し、柾木の芯を冷やす。

そんな思いを抱いてなどいたくなくて、柾木は口を開いた。北条越しに外界の凛とした夜空を目に留めながら。








…な、北条さん、今日なんの日か知ってるか?

そっか。
いや別に、大したことねーヨ。
ただ…今日は星がすげぇきれいな日なんだぜ、北条さん――。


柾木の眼前をきらきらと尾を引きながら、夜空から零れ落ち流れゆく星々は、ただただ冷たく、氷のような輝きで、柾木の心を打ち砕いていった――。



















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