◆小噺置き場◆


北条さんの愛
2011/10/31 00:22



殺し文句だった。

北条さんの…アンタの好きにしていーです。

真直ぐに見つめられて、落ちない男がいるだろうか。ましてや、ただでさえ可愛くて仕方ないと思ってる相手にだ。
その眼には揺るぎない信頼が見て取れて、嬉しさよりもはっきり言って戸惑った。
不思議だった。なんでそんなことを言えてしまうのか。なにがおまえにそこまで言わせる?

聞いたら、びっくりした顔をされ、こちらが驚いた。
さも当然のように彼は言ったのだ。

北条さんが、俺の嫌がることするわけねーから。

…思わず笑っちまった。

可愛いなぁ、でもな柾木、俺はおまえが思ってくれてるほど優しい男でもねぇし、まして良い奴でもないんだよ。
他人に対して分厚い鎧着て隙の欠片も見せたがらないお前が、俺だけに向けてくる混じり気のない好意を。
懐きまくった犬っころみてぇなきらきらした笑顔を、曇らせなくねぇと本気で思ってる。
なのに、まったく相反する感情が心の深いところでせめぎあっていて、不意を突いてそれが出そうになってしまう。

てひどく抱いてやったらどんな泣き顔さらして嫌がるのかとか、傷ついたときに一瞬見せる透明なくらいの真顔とか、わざと突き放してみせたときに溢れそうになる激情を必死に面の下に隠す震える唇とか。
そんなもんが見たくて仕方ないなんて知ったら、おまえは俺を軽蔑するかな。

…いや、しないだろうな。最後はどうしたって許しちまう。おまえの信頼が痛いほど嬉しく、同時に重い。

だけどその重さはのしかかるようなものじゃなくて、しっかりとてめぇの腕に抱えてなきゃダメだってぇ、義務感にも似た…名前を付けるならば、責任というのだろうか。

いっそ単なる重石なら放り出せるのに、けっこうやっかいで面倒くさいと思わないでもない。
でも、それでも片時も離したくないくらい大事大事と思っちまってる、これってやっぱ、愛、なんかねぇ。
な、柾木。



この感情が愛なのだとしたら、徹底的に破滅型だと思うが、上等だと中指おっ立て、俺はおめぇを離さねぇから。


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書き殴ったのは本誌でブラック北条さんが登場する前ですw
発掘したのでUP。お粗末さまでございました。




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