【アキさん】蔵馬夢小説 | ナノ
蔵馬夢1



「目、覚めました?」

・・・・・・えーっと。

「特に外傷は無いと思うんですけど・・・どこか痛んだり違和感があったりする所はあります?」

・・・・・・・・・うーっと。

「・・・・・・意識、ありますか?」

目の前でひらひらと振られる手。その向こうは天井。
私が寝てるのは・・・ベットだな。枕も、しっかり首元まで掛けられた布団も、適度に柔らかくて良い匂いがする。
アロマのフローラル系っぽい・・・私も結構好きなんだよねー何かほっとするんだー。
こーやってついウトウトしてしまうくらい。。。

「あのー・・・」

なんだ人が気持ち良く寝かかっているというのに。邪魔する声の方へ右向け右。

「「・・・・・・・・・」」

緑っぽくも見える綺麗なでっかい目にぶちあたった。
赤みがかった短い髪に一瞬性別を悩む可愛らしい顔。
小学生・・・じゃないな制服着てるし。ついでに学ランだから男の子だ。中一ってとこかな。
っつーか、

「誰。」
「・・・・・・」

一瞬困惑した表情を浮かべた美少年は、しかしすぐに気を取り直して穏やかに口を開いた。

「オレは南野秀一。貴女が家の前で倒れていたのでとりあえず部屋に運んだんですけど・・・事情、説明出来ますか?」

あーなるほど。ここは美少年もとい、秀一クンの部屋かー・・・

「なんで倒れてたの?」
「いや、それを今オレが聞いてるんですが。」

「「・・・・・・・・・」」

私は顔を正面に戻して天井を見つめた後、軽く瞑目した。
横でこの部屋の主が私の様子を伺っているのが感じ取れる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


何も浮かばないぞオイ。

・・・んーっと。

とりあえず、このまま寝転んでたらまたウトウトしそうだから、起きよう。

ぱちっと目を開けてむくっと起き上がって、


異変に気付いた。


・・・いやさっきから薄々違和感はあったんだ確かに。なんとなく深く追究しなかっただけで。
なんか声が幼くないか、とか、ベットが広くないか、とか、顔の横に真っ黒な長い髪が見える気がするんだが、とか、とか。

「・・・秀二クン、ちょっと聞いていい?」
「勝手に次男にしないで下さい秀一です。・・・答えられる事なら答えますけど。」

律儀なヤツだな。いや、そんな事はどーでも宜しい。そうじゃなくて・・・

「私、いくつに見える?」
「・・・年齢、ですか?」
「スリーサイズ聞いてるように見える?」
「・・・・・・。オレと同じ位じゃないですか。ああ、オレは12で、中学に入ったばかりなんですけど。」

わっほう。

私の中の中高時代の記憶は偽者か!!
大学だって確か・・・成人式も・・・・・・げ。その辺からの記憶があやふやだ。

「!!???」

頭を抱えてしまった私を不審そうな心配そうな顔で見つめる秀一クン。
・・・そうだね。この子にとったら私はわけのわからん不審者以外の何者でもないもんね。
説明してあげないとね。けど私だってわけわからんのよね。寧ろ私が零から無限大まで説明して欲しいのよね。どうしようね。

『お邪魔致します。』
「いや多分私もお邪魔してるんだけど・・・って、は?」

思わず答えた後、私でも秀一クンでもない第三者の声だと気付いて顔を上げた。窓の外。


・・・なんだこの箒ならぬ櫂に乗ってふわふわ浮いてるねーちゃん。

空飛ぶ棒といえば箒だろう!


力一杯突っ込みたいのをなんとか耐えてげんなりと口を開く。

「・・・今度はナニ。」
『初めまして、あやめと申します。早速で申し訳ありませんがコエンマ様がお呼びです。ついてきて頂けませんか?』

その言い方はヤだっつっても連れてく気満々だろうがだったら最初っから問答無用で連れてったらいーじゃないかどこの誰だかさっぱりわかんないけどなんかもうどーでもいーや。

瞬時に頭に浮かんだ言葉達を列挙すべく口を開きかけたが、視界の隅で秀一クンがピクリと微かに反応したような気がしたので彼の方を振り返った。

「えっと・・・」

当の本人は困ったような笑みを浮かべている。その意図を汲んだらしいあやめが注釈をつけてきた。

『私は霊体ですので普通の人間には声も姿も認識する事は出来ません。体質や修行によって霊力が強ければ見えますが。』
「・・・私はそのレイリョクとやらが強い体質なわけ?」
『・・・それは、如何とも。その辺りの事も含め、コエンマ様からお話があると思います。』
「コエンマサマ、ねぇ・・・」

あやめを胡散臭く見やった後、秀一クンに向き直ってあやめを親指で指した。

「見えないの?」
「・・・何かいるっていうのはわかるけど。」
『一般人にしては霊感があるようですね。』

相変わらず秀一クンは困った笑みを浮かべ続けている。

ほむ。じゃあ彼から見たら完全に私の独り言なわけか。そりゃ困るだろう。
まだ彼は「ナニカ」の存在をわかってくれてるから良いけど、一般人とやらから見たら私はおもいっきりアブナイ人じゃないか。
って言うか私も一般人の筈だったと思うんだけど。霊だのオカルトだの微塵も信じた事無かったし。

一つ、息を吐く。

「で?そのオマンマサマとやらは何処にいんのよ。」
『ご飯ではありませんコエンマ様です。あの方は霊界に。』

コイツも律儀だ。

「って、霊界?あの世?私に今すぐ死ねってか?」

じとっと睨む私にも動じる事なく、あやめは淡々と説明する。

『いえ、一時的に肉体から霊体だけを抜き出させて頂きます。所謂幽体離脱と言われる状態です。用が済めば元に戻しますのでまた体はきちんと動きます。』
「動きますって・・・電池式のロボットか私は。」
『そのようなものです。』
「・・・・・・・・・。」

真面目なんだかボケてんだか、いや真面目にボケてんのか?とりあえず変なねーちゃんだ。
ま、浮いてたり見えなかったり霊だのあの世だの言ってる時点でもう十分に変とかいう次元ぶっ飛んでるけど。
・・・ほんともう、なんでもいーや。
とにかくちょっとでも現状を把握せんとどうにもこうにもしようがない。

「ってわけでちょっとあの世行ってオマンマとやら締め上げてくるわー」
『コエンマ様です。』
「締め上げるのはいいけど、ちゃんと事情を聞いてからにして下さいね。」
『良くありません。』

聞こえないとわかっているのに、苦笑しながら言った秀一クンにまで律儀に突っ込むあやめ。
んじゃ行ってきまーす、と言った私を確認してあやめが私の手を取った。途端、ふわっと体が宙に浮く。
振り返るとベットに上半身を起こした状態の女の子。

うっわ、紛れも無く12歳位の私だわ・・・・・・写真とかビデオでしか知らないけど。

霊体が抜けたせいだろう、倒れ込む私の体を秀一クンが自然な動きで受け止めて丁寧にベットに寝かせていた。
どんどん遠ざかるその光景をなんとなく眺めながら、ふと思う。

―――12にしてはえらく落ち着き払ったガキンチョだな。

きっと私も傍から見たらかなり奇妙な少女なのだろうけれど。

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