中編・王様の耳はロバの耳 | ナノ
番外)聖☆バレンタイン


「えー願いましてはー……靴箱に17個、机の上に33個、ファンクラブが代表して預かったモノが69個、手渡し&告白が15個……では?」

「……あれ? 海藤君、おーい!『では?』」


 海藤君が机に倒れ込んでしまった。

 データが揃ったところで計算に入ろうか、という時、電卓を忘れた事に気づいた私が海藤君にヘルプを求め結果だ。

 彼のこーゆー事態はとっても珍しくて面白いのだが、今は働けコノヤローだ。安請け合いとはいえ、請け負ったのは君じゃないか!


「おいおい、海藤君や。あの光景で一般男子生徒と同様に君までダメージを喰らうなんて修行が足りないんじゃないのかい?」


 そりゃあ、何のデータか言わなかった私も悪いが……いやごめん、君の心臓には毛が生えてると錯覚していた私がやっぱ悪かったのかもしれない。

 ヤレヤレ、と溜息を付く。

 私は自分の鞄を漁り、動かない屍と化した彼の手に小さな箱をのせた。


「ほら、少なくとも友チョコゲットだよ! 元気出せ!」


 青少年の肩をポンポンと叩いて、チョコの代わりに彼が握りしめていた電卓を奪った。


 ――計、134個也。


++++


 所変わって霊界。

 死者にとってはあの世に『こんにちは』となるが、私にとってはただいまだ。

 今日はバレンタインなので、ちゃんとファミチョコもするつもりですよ。つまり、おとー様とおにー様の分ね。

 出来た娘で妹だなぁと自画自賛! ←


「おにー様、はいチョコレート!」

「…………チョコ?」


 コエンマが私が渡したチョコを手に首を傾げる。


(あれ? もしかして、霊界にはバレンタインの風習が無かった?)


 だとしたら折角用意した分が無駄に!? あちゃー、下調べしておけば良かった!! マイガッ!!


「おにー様、バレンタインって……知らないよねぇ」


 ガックリと肩を落とす私に、おにー様は「知っておるぞ」と答えるが、未だに私が渡したチョコを不思議そうに眺めている。


(知ってたの? でも、知っていてその態度は何故?)


 疑問の晴れない私に、おにー様が説明するべく口を開いた。


「バレンタインというものは、カカオを……グハッッッ!!!」

「お、おにー様!?!?」


 カカオが、カカオが何!? って、今おにー様の後頭部に直撃したのカカオじゃん!!!


「あちゃーコエンマ様、命中しちゃったんですね。ちゃんと避けなきゃダメじゃないですか」


 なんとも呑気にジョルジュさんが登場した。……カカオを大量に携えて。


「ジョルジュさん、何が始まってるんです?」


 聞くのが恐ろしい気もするが、意を決して聞いてみると。なんとバレンタインと節分を合併させた上に、豆→カカオに変換した大バレンタイン大会が始まっているらしい。

 確かに鬼さん達にとったら、豆を投げられる節分は嫌な行事以外の何者でもないだろうし、自分たちが投げる側に回るのは良いストレス発散になるよね。

 うん、分かるよ?

 でもね。


「発案者、出てこーーーーーーーーーーーい!!!!」


 奮発して○○デパートで買った私のチョコレート代を返せ!!!


 カカオ投げネタが分かる方は握手して下さい!

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