6.守りたい


「葉月…!!!」


渾身の力で引っ張る。
葉月は俺と同じくらいの身長なのだ。
目線が少し上だから、もしかしたら俺より少し身長は高いのかもしれない。


「…っ!!会長!?」


なんとか転入生と葉月がぶつかる事は避けられた。
どたっと、転入生が床に転ぶ。

食堂の生徒は俺を見て、ざわついていた。

──あれ、会長だよね?
いつもより疲れてそうだけど、やば、めっちゃ格好いい。

葉月も俺を見てびっくりしている。
良かった、怪我はないようだ。

俺は床に転んだまま下を向いている転入生に歩み寄った。


「ほら、立てるか」


手を差し出してみる。
すると、こちらをキッと睨みつけてきた。


「お前誰だよ!!!なんで邪魔したんだよ!!!!」


でかい声をだすな、頭にひびくんだ。
俺は顔を思わずしかめた。
この騒ぎを鎮めて、今は休みたい。


「ナイフは持ってたら危ないだろ。とりあえず今日はこれで止めておけ」

「え…あ…」


転入生は自分が手にナイフを持っていたことに気づいて、俺の顔をまじまじと見てから顔を真っ赤にさせた。


「おい、大丈夫か?顔があか」

「会長、ありがとうございます。あと君も今日は教室に帰ってください」


話の途中で、珍しく葉月が割り込んできた。
転入生は小さくお、おう、とどもりながら呟き食堂から走って去っていった。
その後を2人の生徒が追う。
もしかして会計と書記か…?

生徒達は俺達2人の組み合わせに、再びざわつきはじめる。
そこへ手をパチパチと二度叩く音が響いた。


「はいはーい!!みなさん落ち着いてください〜!会長の親衛隊隊長の皆籐です。食事が終わった生徒は教室へ。まだの生徒は座って食べてください。」


どこからかユッキーが出てきて、その場にいる生徒達の整理しはじめた。
ユッキーが1度こちらを見てから頷くのが分かった。

よし、ここはお前に任せたぞ。

俺と葉月はとりあえず役員専用のフロアへ移動した。ロフトのように二階になっているので、これで生徒からは見えない。


「会長、ありがとうございます」
「え?ああ」


葉月に礼を言われて少し照れてしまうが、葉月の顔がどんどん訝しげになっていく。


「葉月?」
「疲れてますね。クマもすごい。あとこの服装……生徒に狙われるよ?」


葉月がネクタイに手を伸ばしてきて、鼓動が早まる。


「こ、これは、少し疲れていただけだ。それに俺のことを狙うやつはいない」


俺は生徒には基本的に怖がられているから。


「まったく、水無月はその考えを改めたほうが良い」
「改める必要はない。それより……いたっ」


急にガンガンと頭痛が酷くなる。
会話が続けられない。

だめだ、とりあえず座りたい…。

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