4.日本語と少しの英語なら


それはある日突然やってきた。
髪の毛モジャモジャ、牛乳瓶眼鏡の宇宙人みたいなやつ…らしい。

そして俺は、生徒会室にただ1人取り残されている。
しかも体育祭前の忙しい時にだ。

明日は体育祭実行委員会と風紀委員会との話し合いがある。
それまでに資料をまとめなければならないのに。


「あああああー、おっわんねえええ!!」


ぐしゃぐしゃに髪をかき混ぜる。
やってもやっても終わらない。
予算案、段取り、種目決めエトセトラ。

葉月に助けて欲しくて、携帯を手に取りそうになる。


だめだ、あいつは今…。


遡ること一週間前。
やつがこの学校に襲来したのだ。いや、そんなに悪いやつではない…と思う。
ただ、物凄くVIPでセレブリティな転入生だったのだ。
自分の事が自分でできない。
学校というものに通うのが初めて。

そして何より、日本語が殆ど分からないらしいのだ。
どこかの国の貴族だとか…。
唯一スラスラ話せるのがドイツ語らしい。

そこでその転入生の生活を助けるべく、白羽の矢がたったのが葉月だった。
どこまで優秀なんだよ。
どうやらドイツ語が流暢に話せるらしいのだ。

葉月は体育祭前だから無理だ、と何度も教師や理事長に掛け合っていた。
ただし、ダメだったのだ。

本来ならば、会計や書記が生徒会にはいる。
だから3人でなんとかしろと言われてしまった。
確かに3人いればこんなに大変じゃない。
やってもやっても終わらないなんてことにはならないし、食事だってゆっくり食べられたはずだ。


「なんでこんなことに」


会計と書記は転入生の取り巻きへとなってしまったのだ。
生まれて初めての恋だとかなんだとか…知らねえよ!!
それなら俺だって葉月の隣でずっとらアイツの顔を見ていたい。

とにかく会計と書記は、恋に恋して頭がおかしくなってしまったのだ。
ここ数日全く会ってないが、頭のネジがどこかにいってしまったに決まっている。
電話は着信拒否させられた。

はあ、頭いてー……。
頭を動かすとズキズキと痛む。
偏頭痛だ。
ここの所、毎日頭痛がやってくる。

薬も飲みたいが流石に空きっ腹に飲むのは良くない気がする。
まともに食事もとってないし…


「気分転換もかねて食堂に行くか…」


少しは仕事の効率もあがるかもしれない。
ちょうどお昼の12時にさしかかったところだ。
あとは夜まで集中してやれば、終わるだろう。

もしかしたら葉月の綺麗な顔も見られて、運がよければ綺麗な声も聞けるかもしれない。
そうしたら俄然やる気がでてくる。


prev next
novel top


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -