17.優しい生徒会長



「はあ?」


そう言ったのは誰だっただろうか。
俺かもしれないし、隣にいる葉月か、目の前にいるユッキーか、はたまた後ろに座っているクラスの誰かだったかもしれない。

その位でかい声で意味不明な事を言った目の前のこいつは、どれだけ空気が読めないんだ。
空気清浄機でもプレゼントしたら少しは空気を読んでくれるのだろうか。

そいつの指は未だに俺をびしっ!と指している。

はあ、と思わずため息を一つ。


「何言ってんだお前」

「お、お、俺はお前がすすす、すす、好きなんだ!!だから付き合いたい!!」


転入生の瞳は意外と真剣だった。

いくら真剣な思いだったとしても俺には答えることはできない。
しかし、心変わり速すぎないか?
葉月は隣で呆れたような疲れたような顔をしている。
そうだよな、俺より葉月の方がこいつとの付き合いは長いし、またか、と思う所なんだろう。


「お前の気持ちは分かった。その答えはここで言ってもいいか?」


公衆の面前だし、普通は嫌だと思ったから俺なりの気遣いだ。


「良いぜ!!だってお前の答えは……」

「真剣に言ってくれたのに悪い」

「は?」

「お前の気持ちに答える事は出来ない」

「なんで!?」

「まず、お前の事はよく知らない。苗字さえもな」

「あ、名前はっ!!」

「俺には、好きなやつがいるんだ」


周りがざわつくのが分かった。
もう、俺の片想いがバレてもよかった。
本人にはとっくにバレているわけだし、何より隣に座っている。
それに、空気は読めなくても真剣に告白してくれたんだと思う。
だからこいつには俺も真剣に返してやりたかった。


「好きなのってそこにいる親衛隊のやつなのか?そいつとはただのセフレなんだろ!!」

「違う。皆藤はセフレでもない。それに親衛隊長である前に俺の親友だ。皆藤には間違ってもそういう気持ちを抱いたことも、もちろん性的な接触だってしたことない」

「じゃあ……俺は……」


転入生が下を向き、ぎゅっと両手を握るのが見えた。


「ごめんな」


そう言って俺は頭を撫でてやった。
いつからか変装をやめたのかそいつの髪はサラサラしていて手触りが良かった。


「もういい!!!すぐに俺のこと好きにさせてやる!!」


ぱしっと手を振り払われ、猛ダッシュで走っていってしまった。


一瞬見えた顔が泣いていたように見えた。



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