ないふ


「好き」
「嫌い」
「好き」
「止めろ」
「好き」
「うるさい」

繰り返しても繰り返しても彼はいつだってぼくの言葉を聞かない。

「ぼくのはなしきいて?」
「聞く価値なんてない」

彼は言葉の力を信じない。彼が一言、ぼくを好きといってくれたなら、ぼくはとても幸せになること。彼が一言、ぼくを嫌いといったなら、ぼくはかなしくさびしくさせること。

「ぼくが女だったらよかった?」
「お前がお前じゃなかったら良かった」

彼はいつだってぼくを傷つける。愛を返してほしいなんて思わなかったけど、ぼくはひどくかなしかった。

「ねぇ」
「うるさい」
「怒らないで」
「怒ってない」
「うそ」
「うそじゃない」

でも不器用な彼を誤解しないでください。僕は、彼が大好きなのです。

「すきー」
「やめろっていってるだろ」
「ぼくとってもしあわせ」
「頭おかしいだろ」
「それでしあわせになれるなら」

ナイフを投げる彼は、ぼくから離れていかない。今はそれで十分だ。

彼が僕に飽きるまで、ぼくが彼にひろぉい心を持てるまで。

彼が離れてしまうまで、ぼくはこうして傍にいましょう。

(離れてしまったらきっととても泣いてしまうけど)




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