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Witch Doctor 土方
今日は会社主催のハロウィン仮装パーティの日。
役職にCEOとかつけちゃうあたり、うちの会社はそういう外国が好きそうなことを好む。
いつもはピリッとした大ホールも、今夜だけはハロウィンの不思議な世界に包まれていた。
仮装パーティといえども、ここにいるのは全員社会人だ。だから暗黙のルールで仮装するのは、若い社員だけになっていた。あとの人は適当な格好でお酒を飲んだりしている。
私が選んだ衣装は、小悪魔ちゃん。頭には小さな角がふたつ、胸元が大きく開いているワンピースに、逆十字のネックレスがアクセントになっている。
なかなか周囲からの評判は上々だ。
だけどやっぱり、愛しい彼である土方くんに一番見て欲しかったのだけれど。
あいにく仕事一筋のその彼が、ハロウィンパーティなどに割いている時間はなかった。この時間は会議だとか言っていた。
どうせなら、一人でも楽しむしかない。そう思って他の仮装をしている人たちや、そうでない人たちとも記念撮影大会。最近はデジカメが主流だから思う存分撮れるのが、便利だ。
「俺とも一緒に撮ってくれよ。」
「もちろん、オッケーだよ。」
同僚の原田くんが、撮影を求めてきた。彼とはずっと一緒に仕事をしてきた仲間だし、断る理由もない。
一部の下心丸出し野郎は、もちろん断った。
「んじゃ、俺のカメラで。」
原田くんが手を伸ばして、自分と私を写そうとする。
と、その時。
「悪いが撮影会はおしまいだ。今まで撮った写真があったら削除しろ。」
現れたのは、リアルな角を生やしかけた土方くんだった。
あまりの迫力に一瞬怖気ついた。気が付けば、原田くんは既に逃走済み。覚えてろよ、原田め。
「ったく、んな格好でぬけぬけと他の男と写真撮りやがって。」
「えっと、土方くん会議は……?」
「抜けてきた。すげー色っぽい悪魔がいるって聞いたからな。」
にんまり、だけど笑ってない。
まじまじと土方くんに見られて、今更ながら恥ずかしくなってきた。
「後で24階の小会議室に来い。」
背後から囁かれる、土方くんの声。
「……悪魔を野放しにしとくワケにはいかねぇからよ。」
やんわりと、さりげなく撫でられたヒップライン。
「好き勝手した仕置きは、きちんとしねぇとな……?」
ふぅっ、と息を吹きかけられれば、全身に走る、甘い電流。
「………すぐに、行きます…。」
一番の悪魔は、土方くんだった。
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