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 春待つ花のように 原田

お互いの手の中にある、同じ形をした鍵。おそるおそる鍵穴に差し込んでくるりと回せば、ダンボールがまだ積み重なったままの室内が目に映った。




「この荷物、少し片付けたら飯食いに行くか。」




「そうだね、仕舞えるものは、やっちゃおう。」




この春、私たちは大きな転機を迎えた。

左之助くんとお付き合いをはじめて数年、今日から生活を共にすることになったのだ。




互いのプライベートの奥底とはいい距離を保ちつつ、それでも心の中では一番大切な人。

食べ物の好みも合うし、テレビ番組の趣味もあってると思う。

そんな左之助くんと一緒に住もう、そう思いはじめたのはごく自然なことで。




「ここが、俺ちの新しい住処だな。」




「そうだね…。まさか、一緒に住むなんて考えてもいなかったけど。」




くるくると頭の中で駆け巡る、左之助くんとの思い出。




出会ってキスして喧嘩して。




新しい世界への第一歩。

靴を揃えて脱いだら、格別新しくもないフローリングがツルツルに感じる。




「左之助くん。」




これからどんな生活が待っているのかわからない。

上手くいくのかな、もしかすると取り返しのつかないくらい喧嘩するかもしれない。




それでも今、私の心はこれ以上にないくらいどきどきしている。




「改めて今日からよろしくお願いします。」




「……あぁ。よろしく。」




そう言って差し出された、左之助くんの手。あたたかくて、大きくて、私、大好き。




だから最初の一歩は手を繋いで踏み出した。



















Fin.





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