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 春待つ花のように 斎藤

「はっ……はじめ、くんっ…?!」




「お前っ…何故ここに…?!」




今日から新しい大学生活がはじまる。暖かい日差しが降り注ぐ広いキャンパス。大きな桜の木の下で偶然再会したのは、小学校の時の同級生、はじめくんだった。

小学校を卒業したら、お互い別々の学校に進んでしまって、いつの間にか記憶の人になっていたのだ。




クラスに馴染めなかった内気な私と、読書が好きなはじめくん。休み時間にはクラスに二人残っていた。それから自然と距離が縮まって。




そんなはじめくんは、私の初恋の人になった。




「大学、ここだったんだね。…学部は?」




「文学部、だが…あんたは。」




昔から本が好きな、はじめくんらしい進路。すごく納得。だけどね、はじめくん。




「私も、文学部なんだよ。」




あの時、二人きりの教室で、本に向けるはじめくんの眼差しがすごくキレイに見えた。

何にも知らなかったんだけど、私もこうなれたらいいなって思って。

そしていつか、あの頃の私が見たような眼差しを、誰かに伝えられたらいいなって。




「そうか、意外…だな。それならば今日から学友として、よろしく頼む。」




「こちらこそ。まだまだ、はじめくんから教わりたいことがあるの。」




ふわりと春の風が、桜の花を小さく揺らした。まだ咲いたばかりの花たちは、懸命に散らないよう耐えている。




「…それは、どういう意味だ?」




「…内緒。」




私はそんな春の風に背中を押され、人でごった返すキャンパスへと踏み出した。










Fin.







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