刀剣乱舞 | ナノ

鳴狐の細やかな我儘に応える




「おっはよー」
「あ、みわちゃんだ」
「おはよー」
「はよー」
「おう元気そうだな皆の衆、苦しゅうないぞ」

朝の本丸は騒がしい。何時もは鬱陶しいほどの密集率だが、冬ばかりはこれも恋しい。
朝食場の大広間には幾つものテーブルがあり、そこに各々グループを作って男士たちが座っている。審神者のみわに定位置はなく、交流という意味も含め毎朝適当なテーブルに邪魔をしていた。

「みわちゃん、こっち空いてるよ! 新撰組にお出でよ」
「おはよ安定。昨日そこで食ったばっかじゃん、今日は違うところ」
「ちぇー」

「ということでほい。鳴狐お邪魔するよー」

寝転がって絡んで来た大和守安定を捌き、隅っこでちょこんと座っていた鳴狐の隣に邪魔をした。特に断ることもなく、鳴狐は琥珀色の瞳を緩めて「いらっしゃい」と招いてくれた。

「今朝も冷えるねー、 あ。お供ちゃんおはよー」
「むぅぅ… おや、主殿!これはお恥ずかしい所をお見せいたしました」
「いえいえ愛らしくて良いことで、こっちにもお出でなさいな」

お供ことトモちゃんは、テーブルの下で胡坐をかいた鳴狐の足の上にいた。そこで鳴狐のゴールデンフィンガーにより夢現の状態だったらしく眠たそうに眼をパシパシしている。おいでおいでと膝を叩くと、トモちゃんはてれてれと「では失礼を」を寄って来た。そうしてモフモフの狐がみわの膝の上に乗る、じんわりとした生き物の暖かさにみわは満足そうに笑った。

「うん、めんこいめんこい」
「…嬉しそう、」
「その通りです鳴狐! 主殿はとても撫でるのがお上手なのです!」
「はっはは、鳴狐には適わないけどねー」
「謙遜」

そうしてもふもふしていると、騒がしい足音が聞こえてくる。粟田口集団のお出ましのようだ。

「そういえば、鳴狐」
「なに」
「何時も誰とご飯食べてるっけ? 粟田口大家族と一緒?」
「時々…。 昨日は、打刀で食べた」
「歌仙殿と同田貫殿、それに陸奥守殿でしたね! 主殿は加州殿たちと召し上がれてました!」
「おお、良く覚えてるね」
「もちろんですとも! 鳴狐がそれを見て、最近は主殿とご無沙汰であるとたいへんさみしそうにふぎゅるふry」
「余分」

大事なことを訴えるように前足を動かしていたお供が、ひょいと鳴狐に誘拐された。子どもを持ち上げるようにして「余分」と凄む鳴狐に、お供が「しかしですなあ」と渋い顔をしていた。その様子をみているとむくりとイジワルな気持ちが込み上げる。みわはにやあと意地の悪い笑みを浮かべながら、鳴狐に体を寄せた。

「なにぃー鳴狐。寂しかったの? わたしが最近話さなかったから?」
「…別に」
「うそおっしゃい鳴狐、わたくしは知っておるぶるふぶぶ」
「あーもうトモちゃんイジメないの、恥ずかしがっちゃってかーわい」
「止めて、違う」

えいえいと頬を突くも、鳴狐はツーンとそっぽを向くだけだ。愛い奴め。

「じゃあ、今日の近侍は鳴狐にしようね」
「え… 髭切は?」
「レベリングなんていつでもできるでしょ。 おおーーい髭切! きみは近侍リストラだーーー!」
「っちょ…!」
「ややや主殿―!?」

片手をブンブン振るみわに、鳴狐とお供は慌てた。だが、肝心の髭切ははてと首を傾げたあとほわんとした笑顔で「うんわかったー来世で会おうねー」と手を振り返してきた。その隣で弟の膝丸が「兄者を首切りにするとはどういう了見かーーー!!!」と顔を真っ赤にして怒鳴った。だがこちらに襲い掛かろうとした膝丸は髭切に足を掴まれ、思い切り畳に俯せることになる。なんだなんだてんやわんやとざわつき始める広間を見て、みわはクスクスと笑った。その笑みに釣られ、鳴狐も僅かに笑う。

「! 鳴狐、」
「ん、どったー?」

お供の声に振り返ったみわに、鳴狐は少し目元を明るめて笑った。面具越しでもわかる、みわと良く似た笑みで、

「今日は…君を一人占めだ」

みわはぱちりと瞬きをしたあと、照れくさそうに「お手柔らかに」と笑った。

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