刀剣乱舞 | ナノ

鯰尾藤四郎と二度寝する


審神者だから、誰よりも早く起きなければならない。それは仕方のない事だ、審神者になることを選んだのは自分だし、戦に出ずに安全なところに囲って貰っているのだから、それくらいはしなくてはいけない。___そうは解っていても、何もしたくない時があるもので。

「…」

するりと襖を開ける。
まだ日も出てない朝方。うっすらと明るんだ夜色に染まった寝床に忍び込んだ。最大限の注意を払い、音を立てないようにして襖を閉める。そうしていると「…みわさん?」という声が聞こえてびくりと肩が跳ねた。

「あっ」
「あ、やっぱり。 どうしたんですかあ?まだ夜明けですよ〜」
「シー 鯰尾っ シーッ」

「?」

バタバタと手を動かして必死にジェスチャーをする。そうすると、寝ぼけ眼の鯰尾も何かを察して口を閉じてくれた。鯰尾は比較的襖に近い位置で眠っていた。何時もは結わえている長い髪を寝癖で跳ねさせながら、もぞりと布団から起き上がった。濃い色のじんべえが寝返りでめくれあがっている。

「んー…」
「…みわさん、こっち」

所在無さ気にしていると、ちょいちょいと手で呼ばれた。大人しく従う。手前にいる骨喰を起さないようにそっと迂回して鯰尾の布団の上を踏む。本丸で二番目に大きな広間には、刀剣男士がぎゅうぎゅう詰めで眠っていた。鯰尾の隣では五虎退と虎がスヤスヤと天使の寝顔で眠っていた。

「ん、」
「気をつけてください、 はい。到着、ようこそ俺のおふとんへ」

ふわふわの布団に足をとられそうになったが、鯰尾が貸してくれた手で転ぶことはなかった。その手に導かれてとすんと座れば、すっかり布団越しに彼の膝の上だ。すっかり目が覚めたらしい、猫のような笑みでにこにこと笑う鯰尾に思わず抱いていた枕の手が緩む。

「どうしたんですか?誰かに用事でも?」
「ううん…もうちょっと、寝たくて」
「なるほど。じゃあ俺の布団半分貸しますよ、一緒にねましょっ」
「え、 うわっ」

断る暇もない。あっという間に布団の中に引きずり込まれてしまう。ひと肌の残る敷布団に寝転がって、鯰尾が隣で「よいしょ」と布団をわけてくれるのを見守った。とすんと枕に頭を落とした鯰尾の顔が近い、

「みわさん、枕」
「あ、うん…よいしょ」
「寒くないですか? あ、骨喰のちょっと貰いましょう!」
「それだと骨喰が風邪ひいちゃうよ」
「大丈夫、骨喰ネコみたいだから。寒いと勝手に寄って来るんですよ、俺もいつも勝手に湯たんぽにされてます」

そういって鯰尾がわたし越しにぐいと骨喰の布団をひっぱった。すると感じていた隙間風がなくなる。鯰尾と骨喰の布団が被さるなか、骨喰が「ん…」と眉を顰めた。恐らく、体が布団から出てしまったのだ。はらはらしたが、骨喰は数度寝返りをうつと、するするとわたしたちの方へ寄って来た。そうしてぴたりとわたしの後ろでとまり、すうすうとまた穏やかな寝息をたてはじめる。

「ね?」

思わず鯰尾を見れば、悪戯が成功した子どものように笑っていた。
わたしも思わず笑って大きく頷いた。そんなわたしの身体を、鯰尾が布団の上からぽんと叩いてくれる。

「おやすみなさい、みわさん」
「おやすみ、…鯰尾」

静かに目を閉じた。
幸福な朝だった。

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