刀剣乱舞 | ナノ

審神者を辞めたい主を全力で止める男士たち


「…なんか、審神者も飽きて来ちゃったなあ」

その時、本丸に衝撃が走る。

ぼんやりと机に伏せってテレビを見ていたみわの何気ない一言に、居間に集まっていた刀剣たちは動揺を禁じ得ない。加州清光は弄っていた髪を思い切り抜いてしまい。かいがいしくお茶の用意をしていた平野の手から急須が吹っ飛び、隣にいた一期一振の頭に落ちた。燭台切光忠は畳んでいた洗濯物を思い切り破き、宗三左文字は…さほど変わった様子はなかったが。

ひとまず、ガシッと円陣を組んだ。

「ちょっとまって、なに今なんていった? 俺なにも聞こえなかったんだけどオレなにもきこえてない何もきこえてない何もきこえてない」
「落ち着きなさない加州、キャラがブレッブレですよ」
「あ、えっと、主は秋田県に行きたいようですね。ほら、きりたんぽとか美味しいですし、そうですよね一兄」
「ええええええ、えええそうですとも。平野の言う通り、主は秋田県にっああ秋田といえばそんな名前の弟がわたしにもいたようないなかったような」
「ちょっとおちついてよ一期くん! いくら動揺しているからってカッコよくいかないとダメだよ。っていうかあつっ 熱いんだけどなにこれお茶!?なんで頭からお茶被ってるの!?」

「おう、なんだか楽しそうなことしてるじゃないか。どうした?」

そこへやってきたのは、最近カンストした鶴丸国永だ。小脇に政府に無断でゆうか…みつりょ……………友人として招いている日本鶴のトキコさんを抱えている。黒い立派な嘴が「キェエエエエ」と不快な鳴声を発するのをみて、円陣一行は静かに互いを掴む掌に力を入れた。

「ダメだ、俺がしっかりしなきゃ。俺たちがしっかりしないと、みわちゃんがマジでいなくなっちゃう」
「まあ…残っているメンバーといえば揃いも揃ってポンコツ揃いですし」
「わたしも近侍として、出来る限りのお力添えをいたします!」
「弟ともども、全力で御助力いたします!」
「そうだね、僕たちがしっかりしないと…! あんなボケ老人にこの本丸は任せておけないよ!」

「オイ待てコラ 誰がボケ老人だって?アア˝ン?」

鶴丸国永(現役)によって燭台切光忠がコブラクラッチ刑に処されたが、問題ない。むしろ最低限の犠牲で済んだというべきだろう。トキコさんの嘴に腹を餅つきされる光忠の「いっそのこと焼いてくれーーー!!」という叫び声が轟いたが、問題ない。なんにもない。

「あ、主、お茶をいれましたので、休憩といたしませんか」
「菓子受けもご用意しました。みわ殿が好きなちょこれーとですぞ」
「……おー、ありがとう平のんとその兄。何時もより気前いいねー」

「あはははは」

さすが同じ流派の刀というべきか。同じ顔で同じ声で笑ってみせる粟田口の二振りに恐怖さえ覚え、残された円陣メンバーはごくりと息を呑んだ。

「どうぞ、熱いからふーふーしてさしあげますね」
「みわ殿どうやら肩がこっているようですね。よろしければ私が揉みほぐしてさしあげましょう」
「おーわるいね、頼むわ」
「このお菓子でいいですか? あーんしてさしあげましょう」
「はは、平野は戯れがすぎますな。みわ殿が困ってしまうだろ」

(こ、これが噂のクラブ・粟田口…!)
(なんと手練れた接待術…流石は人たらしの元にいただけのことはありますね)
「いや、どうみても新手のホステスだろ。刀剣系キャバ嬢とか誰得」

何時の間にか当然のように加わっている鶴丸国永は置いておき、加州と宗三も負けてはいられないと立ち上がる。なにせ彼らは本丸切っての主大好き系尽します男士(自称)と、誑し込む術なら心得ていますなにせ籠の鳥ですから男士(自称)なのだ。こういう場面で、優等生キャラを貫いている清純派粟田口に引けをとっていては銘が廃る!

「みわちゃん〜」
「うおっ なになにキヨ。こんな風に甘えてくるなんて珍しい。今日は槍でも降ってんの?うちには御手杵さんしかいないよ〜」
「あはは ジョーダンうまいんだから!」

(どこのキャバ嬢だよ)

どうみても金ヅルのサラリーマンをおだてる新米ホステスの加州に、鶴丸はげっそりと顔を歪めた。

「おやおや、どうやらお疲れのようですねみわ」
「おー宗さん」
「ふふ、なんならその淀み… 今宵僕がやさしくほぐしてさしあげm」
「アウトォオオオオオ!」

するりと着物を脱ぎ始めた宗三(ソープ系男士)に、鶴丸はおもいきり座布団を投げつけた。ぼすんっと数枚の座布団の墓石の下に宗三は眠った。起き上がってこないので、円陣メンバーはそれをリングアウトの戦線離脱を見なした。

「たっく いったいぜんたいなんだってんだ! みわよ、どうせまた君が突飛でもないことをいいだしたんだろう?」
「はあ? 勝手に決めつけないでくれます。そういうの被害妄想っていうんですよ、おじいちゃん」

鶴丸国永(健全)によって審神者がチョークスリーパ刑に処された。
それを死んだ魚のような目で見守りながら、審神者の鶴丸に対する言動はともかく。鶴丸に一般常識を説かれるのはどうにも納得がいかないと、円陣メンバーは思った。だが口にはださない、それが集団で上手くやっていくためのコツである。

そうして始まった鶴丸国永VS審神者の争いに、他の刀剣男士が集まってくるなか円陣メンバーは改めて思う。




back

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -