K-Novel

あー、疲れた。今日は特に忙しかった。
こんな日はまっすぐ帰る気になれない。いつものカフェバーに行けば常連の誰かは居るだろう。
そう思ってモノレールの駅に向かった。
ホームで最近買ったスマートフォンを見ていると、背中にどんっと鞄かなにかがぶつかった。
衝撃で前に倒れる、ホームから落ちる!と思った瞬間、力強く腕を掴まれた。
「あっぶねーなぁ。お嬢ちゃん大丈夫?」
助けてくれたのは、おじさんというにはまだ早いけどおにいさんというには遅すぎる男性だった。
「あっ、ありがとうございました。大丈夫です。」
黒い髪とひげが特徴的だ。グリーンのシャツに白のベスト、黒のネクタイ。なかなかオシャレ。
しかし、お嬢ちゃんって・・・私もうそんな歳でもないんだけどな。
「それ、あんま真剣に見てっとまたぶつかられるかもしんねーから、気をつけなよ。」というと二カッと笑った。
「はい…気をつけます。」
その男性はひらひらと手を振ると去っていった。

カフェバーにいくといつものメンバーが集まっていた。
ここで一杯だけ飲んでおしゃべりすると、リセットできる。
今日は仲間のうちの一人が彼氏を連れて来ていた。
眼鏡好きの彼女らしく、眼鏡の似合うブロンドのイケメンの年下彼氏だ。
今日の話題は彼がさらっていった。なかなか微笑ましい。
リアルの恋愛っていうのも、いいものかもねー。なんて思いながら、
私だったら今日助けてくれた男性みたいな年上がいいなー、と思い出していた。



銀行が混んでいてすっかり遅くなってしまった。
こんなお使い、OLも楽じゃない。
オフィス街の二階の歩道を早足で歩く。
と、目の前の別の銀行から覆面をした人たちが飛び出して来た。
えっ、なに!?
状況がつかめないでいると、向こうからヒーローバーナビーがすごい早さで走ってくるのが見えた。
わ、生で初めて見た。
っていってる場合じゃない。目の前のこれはどう考えても銀行強盗だ。
呆然と立ち尽くしていると、覆面の一人に後ろから抱きつかれた。
首元にはナイフが突きつけられる。
ええええ、何これ、私死んじゃうの!?
犯人は私を引きずるように移動すると歩道の欄干を背にして何か叫んでいる。
他の犯人達はヒーロー達に次々倒されていく。
バーナビーがこちらを向いてフェイスオープンにした。
「どう考えても降参した方がいいと思いますよ?」
え、それって説得なの?
「うるせえっ、こいつがどうなってもいいのか!」
ああ、ほら、やっぱり。私まだ死にたくない。
次の瞬間、何かがぶつかる衝撃を感じた、
犯人の手が私から離れる。
反動で歩道の欄干から身体が飛び出した。
落ちる!!!
目をつむる。

あ、あれ?

目を開けると、ワイルドタイガーに片手で抱きかかえられてぶら下がっていた。
ワイヤーでするすると地上に降りると、
ワイルドタイガーはマスクをあげて「お嬢ちゃん、大丈夫?」と言った。
「だ、大丈夫です。」そういうと、ワイルドタイガーはアイパッチの向こうでニカッと笑った。
「ぼーっとしてっと、また落ちるよ。」そういうと手をひらひらとさせながら背を向けて行ってしまった。
えっ、えええ?
あれってもしかして、もしかするのかも!?

はたと我に返って、仕事のお使いの途中だったことを思い出した。
早く会社に戻らなくっちゃ。


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