ポッキーの日:妄想小説の二人

名前変換はありません(本文中では名前は出てきません)
年齢と計算あわなくない?というのは見逃してください

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「懐かしくなって買っちゃった」
そう言って彼女がコンビニの袋から取り出したのはチョコレート菓子。
「今日はポッキーの日なんだよ!」
ぽっきー?
彼女の手には『MIKADO』。
スティックのプレッツェルにチョコレートがついたもので自分では買わないけれどどこにでも売っている定番の菓子だ。
僕があまりにも間抜けな表情をしていたのか、彼女が心配そうに僕の顔を覗き込む。
あ!と小さく洩らして、慌ててパッケージをあける。
「はい」と片手に一本ずつ、二本手渡される。
同じように彼女の手にも一本ずつ。
「で、こうして」
こう?彼女と同じように体の前に掲げる。
彼女が僕の隣に並ぶ。
「1111で、11月11日」
四本並んだMIKADO。
「これMIKADOはね、日本ではポッキーっていう名前なの」
ああ、なるほど。MIKADOの製造メーカーは日本有数の製菓会社だった。
国が変われば商品名が変わるというのはよくある話だ。
「日本には語呂合わせとかでいろんな記念日があってね、それで今日はポッキーの日」
ニコッと笑ってプレッツェルを齧る。
僕も彼女につられて口に入れる。
こういう菓子って久しぶりだな。
「懐かしいなあ。高校生の頃ね、ふふっ」
彼女が何かを思い出したのか楽しげに笑う。
僕の促すような視線に「やっぱりナイショ」と、またプレッツェルを口にいれた。
「途中まで言いかけて内緒っていうのはずるいんじゃないですか」
ぼすんとソファに体を預け、僕も手に持った菓子を齧る。
「もー、話すから拗ねないでよ」
拗ねてません。拗ねていませんけど話してくれるならそう思っていてもかまいません。
彼女が自分から”昔の話”をするのは珍しい。
聞けば教えてくれるけれど”特に話すほどのこともないかな。もう何年も前だし”ということらしい。

ベルガモットが香る紅茶がテーブルに置かれる。
「改まるとなんか恥ずかしいな…えっとね」
手に持った菓子のパッケージに視線を落として微笑む。
「高校生の時にね、友達とポッキーダンスをやったなーっていうだけの話なんだけど」
ぽっきーだんす??
彼女が箱から二本取り出して両手に持って立ち上がる。先ほどと同じポーズだ。
「CMでね、こう…なんていうか可愛い人気タレントが踊るの。それを友達と真似して、」
ああなるほど。友人とCMの真似をしてしてみたということか。
彼女の高校生の頃の話は初めて聞いたかもしれない。
それはとても可愛らしそうだ。
その頃の彼女を想像して思わず笑みがこぼれるのをごまかそうとティーカップを手に取る。

”あなたもわたしもポッキー”
CMソングらしきものを口ずさみながら菓子を持った手を振る。
「あ、意外と覚えてる」
そういって鼻歌が続く。
軽快なメロディとリズムに合わせて彼女の体が動く。
ステップを踏んでくるりとターン。
こちらを見て決めポーズでニコッと首を傾げた。

っっっっっかわいい。

僕と目が合って彼女は真顔になった。
「うわーーーーーーーー、恥ずかしい恥ずかしい」
しゃがんで顔を覆ってしまった。
首まで赤い。
持ったままだったティーカップをテーブルに戻す。
やるんじゃなかったはずかしぬなどとブツブツ言っている彼女に近づく。
「かわいかったですよ。とっても。アンコールをお願いしたいくらい」
彼女の手に握られたままのプレッツェルを齧り折る。
「頼まれてもお断り!!!」
がばっと顔を上げた彼女は僕が咥えたままだったプレッツェルを齧り取る。
その一瞬、唇が触れた。

今度は僕が赤くなる。
自分では見えないけど絶対に真っ赤だ。

「ふふん。正しいポッキーの食べ方だ!」
仕返しをしてやったと言わんばかりの笑顔に白旗を上げた。




何がどうなったのか、乙女クラブと彼女のポッキーダンス完全版の動画をファイヤーエンブレムから見せられたのはしばらく後の話。
彼女は何も言っていなかったから僕も内緒でデータをコピーしてもらった。



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