1

エントランスの扉が重く感じる。
モノレールが動いている時間に帰れたのっていつだったっけ。
メイクボックスを下ろすと少しだけ体が軽くなった。
ソファに座ったら動けなくなりそうでバスルームへ直行する。
ぬるめのシャワーを頭から浴びながらため息みたいな深呼吸をして、明日のスケジュールへと頭を切り替えた。

プライベートのケータイを片手にベッドへ入る。
朝アラームを止めてからずっと放置していたそれには新着メールが一通だけ。
もうこれ携帯しなくてもいいんじゃないのなんて思いながらメールを開く。
バーナビーから来週の予定に関するメールだった。
ええと来週は…ロケが二件、スタジオは雑誌の撮影がいくつかと写真集とCF。CFの日は午後からその一件だけだけど終わり時間が読めないんだよなぁ。
メールの返信を打ちかけて、時計が午前2時を回っていることに気づく。
まあいいか。寝てるときはサイレントにしてるよね。
『比較的早く終わりそうなのは火曜と金曜かな。金曜はCFだから延びるかも』
他人行儀な挨拶も結びの文もなし。近い関係だからこそ、ついつい素っ気ない文章になってしまう。
ピンクのライトがバーナビーからのメールを知らせる。まだ起きてたんだ。
『おかえり。僕の方が合わせられそうだから仕事が早く終わりそうなときは連絡して。忙しくても食事はきちんととるんだよ』
はーーーーー。
スーパー人気の忙しいヒーロー様に気を使われるとは…。
この間は”疲労にはお酢がいいんですよ”なんて書いてあったな。
得意げなバーナビーの顔を想像して、なんだか少し気持ちが軽くなった。

指名のお仕事が増えた。
それはカメラマンの方からだったりタレントやモデル側からだったりで、すごく嬉しいしありがたい。
んだけど、この時期のアパレルブランドのコレクションカタログの仕事と重なってかなりきついことになっている。
上司はコレクションの方は指名じゃないから他の人に回そうかと言ってくれたけど、
半年前から決まっていたし何より他の人も手一杯なのだ。
長袖でも肌寒い海岸でノースリーブを着て微笑むモデル達を見ればこちらも頑張らなければという気になる。
大手メーカーのブランド全部を引き受けている先輩は「洋服なんて全部物撮りでいいじゃねーか!!」って叫んでたけど。
あともうちょっとすれば仕事は少し落ち着くはず。
そしたらのんびりしたいなぁ。
バーナビーと。
なんてね。
最後に会ったのは二週間は前で、それも10日ぶりだったのにコールがかかって二時間で解散した。
それなのに、今一番やりたいことは正直なところ恋人に会うよりもアラームをかけないで眠ることかなあとでてきてしまう。
あとちょっとだからごめんね。
バーナビーからのメール画面をもう一度眺めて、目を閉じた。





[ 11/16 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む][トップページ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -