「すみません、そこのお嬢さん方」


後ろからいきなりかけられた声。あたし、銀時、晋助の三人は同時に振り返った。
見たところ30代半ばの男。特に変わった様子のないその男に何故だかあたしは違和感を覚えた。


「あ?なんだテメェ」

「お前いきなり喧嘩腰だな。……で、俺らに何の用だ、オッサン?」

『………?』


態度の悪い晋助のこともだるそうに答えた銀時のことも、そして何も言葉を発しなかったあたしのこともたいして気にしていない男は懐から一通の封筒を取り出した。
どこにでもあるような普通の白い封筒。晋助がそれを受け取る。


「これを届けてくれませんか?」

『「「はあ?」」』

「お願いします…。では、私はこれで」

「え、おい、ちょ………行っちまった」


銀時の制止にも関わらず、男はさっさと行ってしまった。立ち尽くすあたしたち。


『えー…何かめんどくさいこと頼まれた…』

「手紙とか俺らに全く関係なくね…?そーいうのは飛脚に頼むモンだろ」

「……いや、そういうわけにもいかないらしいなァ」

『「?」』


見てみろ、と晋助に渡されるさっきの封筒。あたしと銀時はその手紙の宛先を見て目を見開いた。

―――沢田綱吉様

そこに書かれていたのはあたしたちのよく知った名だったのだから。
そのせいであたしの意識はさっきの男からこちらに逸れてしまっていた。


***


『…と、いうわけで。はい、ツナ』

「いや、どーいうこと?」


ツナの家に帰ったあたしたちはとりあえずツナにその手紙を渡す。家の中にはツナ一人だった。奈々さんは子どもたちやビアンキを連れて買い物に行ってしまったようだ。


「なんかよくわかんねー奴に渡されたんだよ、この手紙」

「んで、見たらお前さん宛てだったってわけだ」

『とりあえず中見てみれば?』

「あ、うん…」


ツナが封筒の中から一枚の紙を取出し、読み上げた。


『「「「…………」」」』


その内容にあたしたちは沈黙。ツナは顔を青くし、銀時は顔をしかめ、晋助は口角を上げる。そしてあたしはまためんどくさいことに、とため息を吐いた。

送り主は怪盗キッド。手紙の内容を要約するとこうだ。
三日後にツナの持つ大空のボンゴレリングを盗みに来る、というもの。怪盗キッドとはこの辺では有名で、狙った獲物は逃がさないという大怪盗だった。


『「「……ま、がんばれ」」』

「三人とも他人事すぎ!!てゆーかどうしよ―――!?」

「狼狽えんな、ツナ」


聞こえてきた声にツナはピタリと止まる。
……いったいいつの間にあたしたちの傍に来たのか。


「リボーン……」

「話は聞いてたぞ。また面倒なことになったな」

『…のわりには余裕そうだね。何か策でもあんの?』

「まあな」


そう言ってニヤリと笑うリボーン。…あ、嫌な予感がする。


「手っ取り早い話、守護者全員で怪盗キッドを迎え撃て」

「はあ!?」

「俺は今からビアンキを連れてイタリアに行く」

「また急だな」


銀時の言葉にリボーンはまあな、と言った。


「キッドがボンゴレリングの存在を知った原因を探ってくるんだ。本来マフィアしか知りえないリングだからな、これは」


ツナのボンゴレリングへと視線を移すリボーン。…てか、


『またマフィアがらみ?』

「うそ――――!!」


ツナが打ちひしがれている間に、リボーンはさっさと沢田家を出て行ってしまった。



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