「あ、あげはさんだ!!」
そんな声が背後からして、振り返ってみると五人の子供たち、つまりは少年探偵団が立っていた。 ランドセルを背負っているところを見ると、どうやら学校の帰りらしい。
「「「こんにちはー!!」」」
『おお、こんちは』
歩美、元太、光彦の三人はあたしに向かって元気よく挨拶をする。 うん、子供らしくていいね。 残り二人、コナンと灰原哀はあたしに向かって軽く会釈をした。
「誰ですかィ?このガキどもは」
あたしと一緒にいた真選組一番隊隊長、沖田総悟が子供たちを指さして言った。 ガキ呼ばわりが気に食わなかったのだろう。元太が、俺たちは少年探偵団だ!と声を上げた。
『ほら、この前銀行で立てこもりあったでしょ?その時一緒に人質になってた子たちだよ』
まあ、その後もいろいろ関わってんだけどね。
「ああ、アレ。土方さんが随分怒ってやしたぜ」
『それ八割方アンタのせいなんだけど』
総悟があの時のことを思い出すように言った。 そもそも土方さんが怒っていたのは総悟がサボって現場に来なかったのが一番の原因じゃないか。
『あ、こっちは沖田総悟っていって一応警察ね』
「一応じゃなくて立派な警察でさァ」
『教育に悪いからあんまり関わらないようにね』
あたしは総悟の言葉をスルーして、子供たちに向けて言った。 こんなドSと関わったりなんかしたら、この子たちの将来が不安すぎるわ。
「…ねえ。沖田さんが持ってるのって刀?」
「そうでさァ」
コナンが総悟の腰にある刀を指さした。 このご時世帯刀していることが不思議なのだろう。だが真選組だけは唯一それが許されているのだ。 世間にはそのことも彼らの存在もあまり知られていないのだけれど。
「すごーい!歩美も持ってみたい!」
「俺も俺も!」
「僕も触らしてもらってもいいですか?」
「構いやせんぜ」
え、いいの? あたしは簡単に刀を触らそうとしている総悟に対し、それはマジで教育によくないんじゃないかと心配した。 まあ、別に止めたりしないけど。
「そこは止めろォォォ!!」
『「…げ、土方さん」』
「げ、じゃねーよ!何ガキに物騒なモン渡そうとしてんだ総悟!!そしてそこは止めやがれ紅藤!!」
一体いつの間に背後に来たのか。 そこには土方さんが瞳孔をかっぴらいて立っていた。 あーあ、コナン、哀以外の三人が怖がってるじゃん。
『ちょっと土方さーん。子どもたちが怯えちゃってるじゃないですか。どうしてくれるんですか』
「責任とって死ねよ土方コノヤロー」
「何でだよ!」
そこから、剣を抜けェ!、だの、死ね土方ァ!、だの聞こえてきたがあたしはその光景を隠すように五人の前に立った。
「あの人も知り合いかしら」
『うん。あの人は総悟の上司、副長の土方十四郎だよ』
「上司が部下に殺されそうになってるけど」
『いつものことだから大丈夫』
あたしがそう言ったらコナンが憐みを含んだ眼で土方さんを見た。 きっと警察がこんなんでいいのか、とか思ってるんだろうなー。…うん、あたしもそう思うよ。世も末だよね。
『…それで土方さん何でここにいるんですか?』
「あ?総悟を捜してたっつーのもあるが……テメェがいるんならちょうどいい、依頼だ。テメェらにな」
『うちに?それはまた、』
厄介なことが起こりそうな予感ですね。 あたしはその言葉を飲み込んだ。さすがに子どもたち、とくにコナンの前では言わない方がいいだろうから。
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