鳴り止まない警鐘 |
日もすっかり沈んでしまった夜の並盛町。 そんな建物の間をぬって飛ぶように戦う人物が二人。一人は長い銀髪の男、もう一人は額に青い炎を灯した少年だった。 「てめぇ何で日本に来たぁ。ゲロっちまわねえと三枚におろすぞぉ、オラァ」 「答える必要はない」 何も言う気がない少年に銀髪の男は向かって行く。 ガキンッ 「くっ」 「う゛お゛ぉい、よえぇぞ」 「!」 少年はビルの上から落ちそうになるのを踏みとどまり、懐から落ちそうになった一枚の写真を咄嗟に掴んだ。 「(こんなところで…やられるわけには……)」 *** 今日は日曜日。 世間は休み。そしてあたしも休み。……な、わけないよね。うん、わかってた。 『なんか風紀委員になってますます仕事増えた気がする…』 「委員長もそれだけ紅藤を頼っているということだろう」 『そうかァ…?』 草壁さんの入れてくれたココアを飲みながら、あたしはため息を吐く。ギシリ、とソファが音を立てた。 あのヒバリがあたしを頼るとか想像できないんだけど…。 「事実、お前のおかげで最近仕事が効率よく進むしな」 『それならいいですけど』 そう言ってもう一度ため息。 ああもう…書類の山が減らない。 「(仕方ないな…)紅藤、少し頼まれてくれないか?」 『?何をですか?』 「実は委員長がいつも飲んでいるお茶の葉が切れてしまったのでな、買ってきてほしい」 『あー…あのおいしいお茶の』 「ああ。その代わり書類の決裁はやれるだけやっておくから」 ここのところ応接室に籠りっきりだったあたしに休憩をくれるつもりなのだろう。なんて優しいのだろう草壁さんは。 『じゃあお言葉に甘えていってきます!』 「ああ、頼んだぞ」 この時浮かれていたあたしはまさかあんなことに巻き込まれるだなんて思ってもいなかった。 *** 『お茶っ葉買ったー。お茶請けに和菓子買ったー。余ったお金であたしのおやつも買ったー。うん……よし』 草壁さんに頼まれたもの(最後のおやつは別に頼まれてないけど)を全てそろえたあたしは鼻歌交じりに歩いていた。 「うわあああああ!!」 『!…あれはツナ!?』 少し先に見えた人物。それはツナと、そんな彼に向かって剣を振る銀髪の男の姿だった。そしてすぐそばには山本、獄寺が倒れていた。 またマフィア関係だろうか。だったら面倒くさい。けど、 『考えてる暇はない、か…』 あたしは黒曜の一件以来常に持ち歩いている竹刀を袋から取り出すと、そのまま走り出した。 『そこのお兄さーん、危ないよー』 「!」 あたしは銀髪の男に向かって竹刀を投げる。それと同時に、見たことのない少年が自身のブーメランのような武器を使って男の攻撃を防ぐとツナを連れて逃げていった。それを見たあたしも竹刀はそのままにツナたちを追いかけた。 てかあの剣、火薬が仕込んであるのか……危な! 「あ…ありがと……」 すぐ近くに隠れたあたしたち。ツナが少年にお礼を言うが、少年は息を切らせて苦しそうにしていた。 『アンタ大丈夫?……ていうかさ、どういう状況だよこれ』 「その前に何でナチュラルにあげはがいるの!?」 『たまたま通りかかったんだよ。はあ…めんどくさ』 あたしとツナが話している間に、少年は息を整えて少し落ち着いたらしい。 「拙者の名前はバジルと言います。親方様に頼まれて沢田殿にある物を届けにきたのです」 「は?俺に?…つーか親方様って……?」 なんのことだかわかっていないツナに(もちろんあたしも何がなんだかさっぱりだ)バジルと名乗った少年はある一つの箱を見せる。 「これです」 prev next |