忘却の彼方 | ナノ


塗りつぶされた太陽




リング争奪戦の一試合目は晴の守護者対決。と、いうことは。


「あの坊やね」

「あいつかーー」


ツナ側の晴の守護者、笹川先輩とオカマ口調のグラサンがお互いに睨み合う。


「よくお集まりいただきました」

「それでは只今より後継者の座を賭け、リング争奪戦を開始します」


そしてチェルベッロ達はあちらをご覧ください、と言った。その言葉に従ってそちらの方を向いてみると、そこにあったのはライトに照らされた特設リング。


「な…何これー――!?」

『おお、結構本格的なんだねー』

「晴の守護者の勝負のために我々が用意した特設リングです」

「今回は晴の守護者の特性を考慮したリングとしましたが、リング争奪戦では各勝負ごとに特別な戦闘エリアを設置いたします」

「んな───!!あんな大がかりなものをーーー!?」

「ケッコー金かかってんね」

「でも勝負は見えてるんだ。無駄使いだよ」


大袈裟に叫ぶツナに対して相手側の金髪と子供は冷静にそう言った。


「先輩には悪くない条件だぜ」

「おう!リングは俺のテリトリーだ!」


山本の言葉に頷いた笹川先輩は力強く拳をぶつけた。それに対して、


『……もうちょいシャキッとしなよ、ボス』


あたしは隣で頭を抱えてしゃがみこんでいるツナに目をやる。


「いや、だってホントに勝負が始まるんだよ!?あ―――キンチョーする!!」

『情けないなー…。ランボでさえこんなに堂々としてるのに』

「それただわかってないだけだから!!」


あげはは関係ないからいいよね!なんてツナは言うけれど、むしろバリバリ巻き込まれてるからね?ばっちり闇のリングとかいうの受け取っちゃってるからね?
まあ、まだツナに言ってないけれど。


「ねぇ?ボスまだかしら?私の晴れ舞台だっていうのにー」

「欠席みたいだね」

「あの男が他人の戦いに興味あるわきゃねぇ…。そもそも奴の柄にもねえようなこんなセコイ勝負うけねえで俺に殺らせればいいんだ。あんなガキども5秒でかっさばくぜぇ……って ゔお゙ぉい!いつまで睨んでんだぁ!?」


あっちも大概騒がしいな。
というかあまり緊張感がないように見える。完全にあたしたちのことをナメてかかってるなアレ。


「それでは晴の守護者、リングの中央へ来てください」


チェルベッロの言葉にそれぞれの晴の守護者が前に出る。
まずはヴァリアーのオカマ。


「遊んでくるわねー」

「楽しませてもらうよ、ルッスーリア」

「とっとと殺れぇ」


そして笹川先輩。


「行ってくる!まかせとけ!」

「お…お兄さん…」

『先輩がんばれー』


笹川先輩がニッと笑ってこちらを振り返ったのをあたしたちは送り出す。
こうして晴の守護者対決が始まるはずだった。山本が口を挟むまでは。


「なあ、円陣とか組まねーの?」


何を言っているんだろうこの野球バカは。
当然ツナや獄寺も呆然としている。しかし笹川先輩はあたしたちとは正反対だったようで。


「そいつは燃えるな!!一度やってみたかったんだ!!」

「え゛――!?」

「バカヤロー!!そんなダッセーこと!!」

『うわー…めんどくさい…』


各々文句を垂れてみたけれど、完全にやる気の笹川先輩と山本に引っ張られ気付けばあたしたちは円陣に組み込まれていた。


「了平――ッファイッ!!」

「オー!!」

『「おー…」』

「………」

「よし、極限力がみなぎってきたぞ!」


笹川先輩の掛け声に元気よく反応したのは山本のみ(獄寺に至っては無言)だったが、彼はそれでも満足したようで今度こそリングへと上がって行った。


「間違いありません」

「正真正銘の晴のハーフボンゴレリングと確認しました」


リングに上がった笹川先輩とルッスーリアの指輪をチェルベッロたちが確認する。


「指輪は原則として首から下げる事とします」

「そして相手を倒し、指輪を奪った者が勝ちです」


チェルベッロの指示通り、二人は首から指輪をかけた。
そして笹川先輩は着ていた上着を脱ぎ捨てる。


「!あらぁ?んまぁ!」


笹川先輩が脱いだことで嬉しそうに反応したのはルッスーリアだ。


「よく見りゃあなたいい肉体してるじゃない!!好みだわぁー」

「なに!?」


ルッスーリアの言葉に隣のツナと獄寺はサッと顔色を悪くした。


「あいつ今…なんて言いました!?」

「さ…さぁ…?」

『……まあ、そーいう趣味の奴も世の中にはいるってことだよ…うん』


「お持ち帰り決定ー!」


あ、お持ち帰りまでしちゃうんですね。
笹川先輩はあまり意味が分かっていないらしく、特に気にしていないようだけど。


「さっきから何を言っているかわからんが、俺は正々堂々戦うだけだ」


そう言って笹川先輩は拳を構えた。


「んまぁそのポーズはボクシングかしら。またいけてないわねー、このルッスーリアが立ち技最強のムエタイで遊んであげる」


対するルッスーリアも着ていたコートを脱ぎ捨て、片足を上げて構えた。
そういえばあたし、ムエタイって見たことないかもしれない。



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