忘却の彼方 | ナノ


塗りつぶされた太陽




「やはりヴァリアーも晴の守護者は格闘家か…」


ルッスーリアを見て、山本の肩に座っているリボーンが呟いた。


「やはり…?」

「歴代のファミリーを見ても晴の守護者はみな強力な拳や足を持っていた。ファミリーを襲う逆境を自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪となる。それが晴の守護者の使命だからな」


ふうん…守護者にはそれぞれそういった使命もあるのか。闇の守護者はどんな感じなんだろう。


「では晴のリング、ルッスーリアVS笹川了平、勝負開始!!」


あたしがそんなことを考えていれば、勝負開始の合図が耳朶に触れた。と、同時に目も開けていられないくらいに周りに設置されているライトでリングが照らされる。
リングにいる笹川先輩はもちろん、あたしたちでさえもその眩しさに目が眩んだ。


「この特設リングは晴の守護者の決戦にふさわしく設計された、擬似太陽により照らし出される日輪のコロシアムなのです」

「なにそれ――!!何も見えないよ!!」

「俺のサングラスを貸してやる」

『うわ、準備いいねリボーン』


あたしたちはありがたくリボーンからサングラスを受け取った。
しかし当然先輩はサングラスなど持っていないわけで。


「ぐあっ」


元からサングラスをかけていたルッスーリアに先手を食らってしまった。


「あぁ!!ヴァリアーの人はサングラスつけてるから自由に動けるんだ!!これじゃ勝負にならないよ!!お兄さんにもサングラスを!!」

「勝負中の守護者との接触は認められません。もし行えば失格とし、リングを没収します」

「そんな……!!」

「キタネーぞ!!」

「あーら、この感触思ったよりいい肉体してるわ。ますますタイプ」

『(楽しそうだなーあのオカマ…)』


語尾にハートでも付いてそうな勢いだ。笹川先輩可哀想に。

そして目を潰されてしまった笹川先輩は闇雲に拳を振るうが、ルッスーリアには当たらず逆にまた殴られてしまう。


「ぐわあぁあ!!」


リングのロープは電熱の鉄線で何百度にも熱せられているらしい。
マフィアの戦いなだけあって結構厳しいな。


『(笹川先輩はまだ中学生なのにね…)』


隣にいるツナや獄寺たちも、あたしからしたらまだまだ子供だ。だから見ている方もつらいんじゃないだろうか…。


『(そんな甘いこと、言っても仕方ないのだけれど)』

「ん――私の完璧な理想の肉体に近づいてきたわー。私の思う究極の肉体美とは、朽ち果てた冷たくて動かない肉体」

「それって死体のことじゃねーか!?」

「え゛……え゛――!?」


とは言っても先輩が黙ってやられているわけがない。


「くっ…ふざけるな!」


先輩はまっすぐに拳を放ち、今度はルッスーリアに命中した。けれど、あれは…。


「当たった!」

「す…すごいパンチだ!」

『いや、あれは多分、』

「いじめちゃいや――ん」


先輩の拳に当たりに行ったのはやはりわざとのようだ。
その力を利用して上へと飛んだルッスーリアは身を翻した。


「なにっ!?だが今の感触…奴は空中…!次は逃がさん!もらった!」

「ムフ」


聴覚だけでルッスーリアの位置を特定した笹川先輩は、今度は空中に向けて拳を放つ。その拳はルッスーリアの左膝に当たった。


「うぉお!腕があぁ!」


しかしダメージを受けたのは先輩の方。ルッスーリアの左膝には鋼鉄が埋め込まれていた。


「もうあなたの拳は使いものにならないわ」


ルッスーリアが笑った。


「お兄さんの手が……」


「やべーのはそれだけじゃねーぞ。了平の奴ライトの熱にやられて脱水症状が始まってる」

「そんな…このままじゃ……!!」


ツナが焦ったように声を上げた時、


「立てコラ!!」


あたしたち、誰のものでもない第三者の声が響いた。


『あー…あれは確か、』

「コロネロ!!」


そう、コロネロ。リボーンと同じ雰囲気を持った先輩の師匠だったっけ。
どうやらヴァリアー側もコロネロに気付いたらしい。スクアーロの声は本当によく響く。


「そろそろ頃合だぜ。お前の本当の力を見せてやれ了平!!」


コロネロがリング上にいる先輩に向かってそんな言葉を投げかけた。


「今更誰が何を言っても無駄よ。この子はもう終わり。いただくわ」

「コロネロ……師匠…!その言葉を待っていたぞ!!」


コロネロの言葉に反応した笹川先輩が身体を起こした。






(あのオカマは本当に楽しそうだなァ…)
(あげはずっとそんなこと考えてたの…?)
(そんなわけないじゃん失礼な!)
(ええ…)



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