桜色に思いを馳せて |
ヒバリの攻撃を全て受け止めている山本は大したやつだと思う。しかしヒバリもまだまだ余裕って感じだな。 「僕の武器にはまだ秘密があってね」 「秘密……!?」 山本の刀はヒバリのトンファーの仕込み鉤によって動きを奪われる。そしてヒバリはそのまま山本をぶん投げた。 …相変わらず華奢なくせにどこにそんな力があるんだか。 「くっそーまたかよ」 『おつかれ山本。さて、獄寺、山本ときて…残るは、』 「ツナだぞ」 渋るツナに向かってリボーンは銃を向ける。そして撃った。 「復活!! 死ぬ気でヒバリを倒す!!レオン───!!」 ツナの呼びかけにリボーンの肩に乗っかっていたレオンははたきに姿を変える。 「はたき……!?」 「し、渋い!」 『…その前になんでパンイチなの?アイツ。性格もまるっきり違うし…』 「死ぬ気モードだぞ」 『死ぬ気…?』 リボーン曰はく、死ぬ気弾という弾を額に撃つと死ぬ気になるらしい。そこでパンイチにつながる意味はよくわからんが、マフィアにもいろいろあるんだろうな、うん。 トンファーで容赦なく攻撃を仕掛けるヒバリとそれにはたきで応戦するツナ。なんともシュールな光景だ。 「君は変わってるね。強かったり弱かったり、よくわからないから、」 殺してしまおう。 そう言って攻撃の手を緩めないヒバリ。しばらくは二人とも互角だったが、ツナの額の炎が消えてしまった。つまりは死ぬ気モードとやらが終わってしまったわけで。 ヒバリがその瞬間を見逃すはずもなく、ツナに向かって行く。 「わっ、ちょっ、待って!ひぃ!!」 さっきまでの態度が嘘のように目をつぶって衝撃を耐えようとするツナ。 しかし、ツナがやられることはなかった。 『ヒバリ……?』 そこには膝をついているヒバリの姿。 「えー!?うそっ!?俺がやったの――!?」 「違うぞ。奴の仕業だ」 リボーンの視線の先には先程あたしとヒバリによって伸されたシャマルがいた。 「おーいて、ハンサムフェイスにキズがついたらどーしてくれんだい」 リボーンが言うに、シャマルはさっきあたしらから攻撃を受けた時にトライデントモスキートというものを発動したらしい。 「わりーけど超えてきた死線の数が違うのよ。ちなみにこいつにかけた病気は桜に囲まれると立っていられない"桜クラ病"つってな」 「(またヘンテコな病気だー!!)」 『(…さっき感じたのはコレ、か)』 最悪だ、と心の中でぼやく。 コイツが一般人ではないことにもっと早く気づいていれば、ヒバリには手出しさせなかったのに。 「約束は約束だ。せいぜい桜を楽しむがいいさ」 ヒバリはフラフラと立ち上がると覚束ない足取りで帰ろうとする。 これじゃあバイクを運転するのは無理そうだな。あたしはバイクの回収をメールで草壁さんに頼む。 『じゃ、あたしも行くから』 「え、あ、うん!」 『じゃあね』 あたしはそれだけ言ってヒバリを追いかけた。一瞬シャマルと目が合ったが気付かないふりをして。 「シャマル、お前あげはを敵に回したな」 「おー…そうみたいだな。かすかだが殺気も纏わせてたし。ま、怒った顔も美人だったけどな」 あたしが去った後、二人の間でこんな会話がなされていたとか。 *** 『ヒバリ、大丈夫?』 「うん。桜から離れれば平気みたいだよ」 『……そ』 まだ少し顔色は悪いが、ヒバリは普通に歩けている。桜がない限り日常生活に支障はなさそうだ。 でも、 『(もう桜は見れない、かなー…)』 今回の花見は少なからずあたしも楽しみにしていた。 だって桜は好きだ。あの頃を鮮明に思い出せるから。あの人を、アイツらの声が聞こえるような気がするから。あの人たちが好きな花だったから。 『(…まあ、今更言ってもしょうがないか)…ヒバリ、お弁当どうする?』 「並中の屋上で食べる。そこからなら多少は桜も見えるはずだよ」 『……へ?』 「君、桜見るの楽しみにしてただろ」 『…………』 ば、ばれていらっしゃいましたか!まったく、ヒバリは鋭いなー…。 『ありがと、ヒバリ』 何気ないコイツの優しさに自然と笑みがこぼれたそんな春の日。 (…………) (ヒバリ?何固まってんの?) (…なんでもない) prev next |