忘却の彼方 | ナノ


マフィアと邂逅




***


「何するんですかディーノさん!!」

「いきなり悪かったなツナ。お前のファミリーを試させてもらった」

『まあ、捕まるツナもツナだけどね』

「あげはの言う通りだな」


あの後、ディーノさんは悪かったな、あんなこと言って、とあたしに謝った。
正直びっくりだ。絶対軽蔑されたかと思っていたから。ディーノさんも大概お人よしだなー…。


「あ、そういえば言い忘れてたが桃巨会ってのは本当にこの町に実在するヤクザなんだぞ」

『え、』

「「はあああああああ!?」」


桃巨会ってホントにいたんだ。獄寺と山本、乗り込んで行っちゃったけど。大丈夫かそれ。


「獄寺君!山本!」


リボーンの言葉を聞いたツナはすぐさま走って行く。その後を追うディーノさん。
あたしも行かなきゃダメかなこれ。……まあ、ここまで関わっちゃったんだし、仕方ないか。
あたしも二人の後を追って走り出した。


***


「そこだな」


ディーノさんがツナに言う。
桃巨会にやって来たあたしたちは中の様子を伺うように先にある扉に視線をやった。目の前にはツナ曰はく山本のカバンが落ちている。


「ていうか、なんであげはまで来てるのー!?」

『ノリだよノリ』

「ノリでヤクザに乗り込むって……!」

「そうだぜあげは。危険だからお前はここで待っててくれ」

『元からそのつもりですよ。頑張ってね、二人とも』


あたしはツナとディーノさんに手を振って、乗り込んで行く二人の背中を見つめた。

しばらくの間は静かだったけれど、今は中で乱闘が起きているようだ。
うめき声やら銃声やらが聞こえてくる。………ん?銃声?


『大丈夫かなー…アイツら』

「お?こんなとこで何やってんだ嬢ちゃん?」

『!……ってなんだ。ディーノさんの部下じゃないですか』

「ボスはこの先か?」

『そうですよー』


いきなり声をかけられたから思わず身構えちゃったけど、なんてことはないディーノさんの部下たちだった。
彼らはあたしが示した扉へと入っていく。……もう心配する必要はなさそうだな。


「こんなとこで何やってんだ嬢ちゃん?」

『………またか』


さっきのディーノさんの部下たちと同じような感じでまた声をかけられた。
さっきと違うのはソイツが一人だけだというのと、明らかに味方ではないということ。桃巨会の奴か……。


「この先で俺らの組が襲われてるらしくてな。嬢ちゃん、人質にゃちょうどいいじゃねーか」

『…………』


そう言ってあたしを睨む男。
人質、ね。あたしにそんな価値があるとは思えないが、ツナは優しいからなー…。きっと気にするだろう。


『…ホント面倒』

「あ?」

『あたしは普通に過ごしたいってのにさー…』

「な……っ!グハッ!」


あたしはソイツの腹に蹴りを一発入れる。崩れ落ちる男。


『体、やっぱり動かしにくいな』


そりゃそうか。昔と違って今のあたしは普通の子よりちょっと運動神経がいいだけだもんな。


『(少し鍛えようかなー)』


あたしはそんなことを考えながら、倒した男をツナたちに見つけられないように隠した。
あたしが倒したと知られるのは面倒だから。


<〜〜♪〜〜♪〜>


『ん?電話?………げ、』


あたしは携帯のディスプレイに映った名前に思わず声を漏らした。なぜならそこに示される名前はヤクザよりも恐い風紀委員長の名。


『も、もしも<遅い。今何時だと思ってるの?>………』


お、怒ってらっしゃる……!
声が低い。いつもより何倍も低い声でてるよこの人!


『ご、ごめんヒバリ…。ちょっといろいろあって…』

<10分で来なかったら咬み殺す>

『え、ちょ、まっ<ツーツーツー…>…切れてら』


てか、10分で行かないとマジで咬み殺される…!


「あ、あげは!大丈夫だった!?」

「紅藤も来てたんだな!」


ヒバリの電話が切れると同時にヤクザを壊滅させて戻って来たツナたち。
彼らに怪我はないようだが、あたしはそれを喜んでいる場合じゃなかった。


『ごめんツナ!あたし今から10分で学校行かなきゃだから!』

「え?」

『じゃあね!』


あたしはそれだけ言うと、何か言いたげなツナたちを残して学校へと全力疾走したのだった。





(…何だったんスかねアイツ)
(((さあ?)))



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