忘却の彼方 | ナノ


マフィアと邂逅




***


次の日、あたしは昨日と同じ制服に着替えて、下に降りた。


「おはようあげはちゃん。よく眠れた?」

『おかげさまで』


寝るまでが大変だったけどね。
部下がいないとダメダメなディーノさんに水につかるとデカくなる亀とかね。なんかもう常識から外れてたよね。さすがマフィア。


「おはよー」

「おはようツっ君」

『はよー』


起きてきたツナと一緒に朝食を食べて、玄関を出る。その際にツナのお母さん、奈々さんがいつでも遊びに来てね、と笑った。


『……いい母親だね』

「え?今なんか言った?」

『いや…なんでもないよ。行こ』


外に出たら、昨日のディーノさんの部下たちが集まっていた。そしてその後に来たのはツナとよく一緒にいる獄寺隼人と山本武。


「おはようございます10代目!……ってなんでテメェまで10代目の家から出てきやがるんだ!!」

「はよっすツナ!紅藤とツナって仲良かったんだな!」

「お、おはよう二人とも」

『はよー。それとあたしがここにいるのは成り行きだコノヤロー』


あたしだっていたくてここにいるんじゃないんだよ。

その後あたしたちは四人で学校に向かう。
そしてその間に分かったことは獄寺とディーノさんは知り合いだということ、獄寺は年上は皆敵だということ。ろくなことわかっちゃいねェなオイ。


***


「…あれがツナのファミリーか」

「使えそうか?」

「どうかな?ファミリーに大事なのは信頼だ。それが見えねえ限り俺は認めねーよ」


それに、とディーノは付け足す。


「どう見たってあげはは普通の子だった。お前はなんであんな子をファミリーに入れたんだ?」

「アイツは普通じゃねーぞ」


ま、実力はまだわかんねーけどな、と笑う家庭教師にディーノは怪訝そうな顔をする。


「どういう意味だ?そりゃあ…」

「あげはの奴、俺の実力を分かった上で敢えて関わらないようにしてるからな。一般人とは思えねー。…それにアイツの"目"はきっと役に立つぞ」

「目……?」

「まあ信頼ということならいっちょ試してみるか?」


***


あたしたちが他愛もない話をしていると後ろからけたたましいエンジン音が轟いた。背後から迫って来た車はあたしたちの横を通り過ぎると、そのままツナを連れ去ってどこかへと走り去っていった。
それを獄寺と山本が追おうとすると、制止の声がかかった。リボーンだ。


「ありゃここら一体を締めてるヤクザ桃巨会の仕業だな。ヤクザといえばジャパニーズマフィアだ。大人マフィアに中学生のお前らが敵うわけねえ。ここは警察にまかせろ」

「まかせられません!」

「そーいうことだ。後は頼んだぜ小僧!」


二人はそう言うと車が去って行った方へと走って行って見えなくなった。


「お前は行かねーのか、あげは?」

『…必要ないでしょ。それに、「何で行かねーんだよ」……』


あたしの言葉を遮ったのはディーノさんだった。彼の表情には微かに怒りが混じっている。


『…だからさー、あたし一般人だからね?そんなあたしがヤクザに乗り込んだってしょうがないじゃん』

「それでも、心配したりするだろ!?お前はなんでそんなに落ち着いていられるんだよ!」

『それはアンタが一番知ってると思うけど』

「!」


あたしはそこまで言って、ふう、と息をつく。…ホント、この赤ん坊と関わるとろくなことがいない。
そしてあたしはさっき言えなかった言葉の続きを話し始めた。


『アレはアンタらが仕組んだことでしょ?』

「!……何で、」

『まず第一に、ヤクザがあんな堂々としかも人目に付きやすい朝に人を連れ去るわけがない。次に、連れ去った奴らからは殺気が感じ取れなかった。…最後に、ちらっと見えた運転手はついさっきまでいたディーノさんの部下の一人だった。……どうよ』


あたしはここまで言ってディーノさんの方を見てニヤリと笑った。


「……ハハッ。参ったね。大したもんだなあげはは!」

「ホラ言ったろ?コイツは普通じゃねーって」

『…………』


しまった。なんかノリでこんなこと言っちゃったけど、普通の子はしないよねこれ。
ここはウソでもツナ大丈夫かな…あたし心配、とでも言っとくんだった!…いや、待て。今のはちょっと気持ち悪いな。
てか、あたしまんまとハメられた?



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