※ちょい過去捏造
『ねえ、ぎんとき』
「…なんだよ」
『ぎんときってさ、きれいだよね』
「………は?」
『だって――――』「銀さん!!起きてください!!」
「しんぱち…?」
朝、いつものように俺の部屋に新八が起こしに来た。
…うわ、もう11時じゃねーか。
俺は新八が出て言った後、ゆっくり起きてリビングへと向かった。すでにそこには神楽がいて、俺の飯にまで手を付けていた。
「神楽ちゃあん?それ銀さんの朝ごはんだよね!?何平然と食ってんだテメェエエエ!!」
「銀ちゃんが悪いアル。早く起きないから」
「そうですよ。てかもはや朝食じゃなくて昼食じゃないですか」
「うっせー」
文句を言い始める新八を無視して、残り少なくなってしまった俺の朝食兼昼食を食べる。
「ねえ、銀ちゃん…」
「あ?」
「あげは、ちゃんとご飯食べてるアルか?」
「…俺達よりは食ってんじゃねーの?」
一週間前、共に万事屋を営んでいた幼馴染紅藤あげはが突然姿を消した。
あいつはそこいらのチンピラに負けるほど弱くはねーし、大概のことは自分で何とかする奴だ。どこかで死んでいるとも思えない。
だが、
「(なんで携帯繋がんねーんだよ…)」
何度携帯にかけても聞こえてくるのは無機質な機械音のみ。あいつが携帯の電源を切っていることはほとんどないのに。
あげはがいなくなったことは真選組の奴らやヅラにも話した。
それでも有力な情報が入ってくることはなくて。
「銀さん、僕と神楽ちゃんは今日も情報を集めてきますね」
「ああ、頼んだ」
食べ終えた新八と神楽は定春を連れて、今日もあげはが消えてしまった件についての情報を集めに万事屋を出ていった。
必然と一人になる部屋で俺は今朝見た夢を思い出していた。
あれは確か俺があそこに来てすぐの頃だったか…。
***
戦場で死体の身ぐるみを剥いで過ごしていた俺は突然現れた吉田松陽という男に連れられある寺子屋まで来た。
「銀時、君は今日からここの生徒です。ですからこれを」
そう言って渡されたのは一冊の本。
生徒、なんて。この俺が。皆俺の姿を見て気味が悪いと言うのに。
先生と教室の中に入れば、そこにいたのは俺と同い年くらいの男女。皆が皆こちらに視線を向けていた。
居心地が悪くて下を向く。
そしたら先生が少し笑って、俺の背中を押した。
「今日から一緒に勉強することになった坂田銀時君です。ほら、銀時。君の席はあそこです」
そう言った先生に示された席に俺は座る。
それから他の奴らと同じように先生の授業を受けた。授業はよくわかんなくて、途中で寝てしまったけど。
授業が終わり皆が帰っていく中、皆とは帰らず寺子屋に留まった三人。
そいつらがヅラと高杉、そしてあげはだった。
ヅラと高杉は毎日のようにここに泊まっているらしいが、あげはは俺と同様に先生と住んでいるらしい。先生があげはも俺が来る数か月前に拾ったのだと言っていた。
あげはたちは俺の姿を見ても何も言わなかった。だから一番関わるこの三人とは自然と一緒にいるようになった。
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