***


俺がここに来てしばらくたったある日、あげはが突然こんなことを言い出した。


『ねえ、ぎんとき』

「…なんだよ」

『ぎんときってさ、きれいだよね』

「………は?」


何言ってんのこいつ。俺がきれい?気味が悪いじゃなくて?


『だってそのかみも目もきらきらかがいてほうせきみたい』

「…そんなこと言ったのはおまえがはじめてだよ」

『そうなの?』

「ああ、だってみんなおれをきみわるがるし…」


そう言って俯いた。あげはは、そっか―…と言って何か考えているようだった。


『これはねえ、あたしがせんせいにいわれたことなんだけど、ぎんときにもおしえたげるよ』

「なにが」

『あのね、"価値観"ってひとそれぞれなんだって』

「かちかん?」

『そう、だからたとえたくさんのひとにみとめてもらえなかったとしても、かならずじぶんのことをみとめてくれるひとがいるんだって』


だからあたしは"それ"だね。
あげはが笑った。


***


「あほらし…」


一人昔のことを思い出していた俺は一言呟いて立ち上がる。そして受話器を取ると嫌でも覚えてしまった番号に電話をかけた。
変わらず聞こえてくるのは機械の声。


「チッ…」


舌打ちをして受話器を無造作に置く。
木刀を腰に差すと俺は家を出た。


「勝手にいなくなってんじゃねえよ、馬鹿あげは」


必ず見つけてみせるから。だから、それまでは…


***


『……ん?』

「どうしたのあげは?」

『んー、なんか懐かしい声が聞こえたような気がして』


ここは並中の屋上。なんだか銀時の声が聞こえた気がして空を仰いだ。


「戦いの前に声が聞こえるとか死亡フラグみてーだな」

「縁起でもないこと言うなよリボーン!!」

『そうか。あたし死ぬのか』

「ちょっ、何真に受けてんの!?」


だってあたしの戦う相手強いらしいし?面倒くさいと自然と負のオーラが。


「死亡フラグは冗談として、今夜なんかあるのは間違いねーかもな」

『リボーンが言うとやけに信憑性が増すよね』


ふと、獄寺を見ると難しい顔をしていた。あたしが獄寺の方に声をかけると口を開く。


「…紅藤、てめえ死ぬんじゃねーぞ」

『獄寺…?』

「死んだら10代目が悲しむだろーが!!」

『あたしの心配しろよコノヤロー』


ちょっとときめいたあたしが馬鹿でした。


「大丈夫だって紅藤。ピンチになったら助けっから」


そうあたしに声をかけたのは山本。
おお、山本の後ろに後光が差しておられる…!


『危うく山本におちるかと思ったわ…』

「?落ちる?穴にか?」

「(さすが山本。天然だ…!)」


そろそろ日が暮れる。夜になればいよいよ闇の守護者対決。
まだ、死ぬわけにはいかないから。あたしは勝ってみせるよ。

だから早く迎えに来てよね、銀時。




儚い夢に手を伸ばした
(必ず見つけてみせるから。だから、それまでは…)
(どうか無事でいて)


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