※オリキャラでます




ピンポーンとインターホンの軽快な呼び鈴が鳴る。機械越しに聞こえてきた声に万事屋です、と答えればしばらくして玄関の扉が控えめに開かれた。
家の中から出てきた家主の顔を見て、普段やる気のなさそうな、無表情のような彼女の顔が少し驚きの色に変わる。とはいってもその変化はおそらく身近な者しか気づかないような些細な変化だったが。


『アンタが桐島鈴夏さん?』

「はい…」

『さっき電話でも名乗ったけれどあたしは紅藤あげは。今日からしばらくよろしく』


依頼人、桐島鈴夏は銀時の言っていた通り美人であった。少しこげ茶のセミロングの髪にぱっちりとした二重の目。
しかしそんな彼女の顔色は優れない。ストーカー被害にあっているのだから当然といえば当然なのだろうが。

軽く挨拶を交わしたあげはは桐島の家に上がらせてもらうことにした。


『さて、依頼内容の確認だけど…今日からあたしがここに住むことになってるけどいいよね?』

「はい…最近じゃ怖くてよく眠れなかったから……。だから紅藤さんが来てくれて少し安心できそうです」


控えめに笑った桐島。その笑みはどこか暗さも含んでいたけれど、それでも少し恐怖からは解放されたようだった。
それを見てあげはは話を続ける。


『…それから警察には言っていないようだけど、どうして?』


これはあげはが最も疑問に思っていたこと。単なるストーカーならば警察に相談すればいい話だ。それをわざわざ自分たちに相談せずとも。


「………見たんです」

『見た?』


消え入りそうな声を聞き取ったあげは。見た?何を?それが警察に言えないのとどう関係している?
そこまで考えてふと思い出したあの資料。あの四人が囲んで眺めていた未だ犯人の捕まっていない連続殺人事件の資料。


『…そうか。アンタは見ちゃったんだ……今起こっている連続殺人事件の犯人を』


ビクリと肩を揺らす桐島。
やっぱりそうだったか。ストーカーはストーカーでもこれは少々厄介らしい。


「…警察に言ったら殺す、と電話がかかってきたんです。その日から毎日誰かに後をつけられてて…!」

『うん…わかった。怖かっただろ?もう大丈夫』


あげはは彼女を安心させるように頭をなでる。


『だってあたしたち…万事屋がこの依頼を請け負ったんだから』


何の根拠もないのに、ヘラリと笑った女の言葉にどこか安心している自分がいた。そんな自分を桐島自身が一番驚いているだなんて。


***


<どうだ?そっちの様子は?>

『うーん……特には。三日経った今、犯人の方から接触してくる様子はないかな』


まあ、毎日後はつけられてるんだけどね。そう付け加えて。
桐島の家に泊まって三日目の夜、あげはは桂と連絡を取っていた。お互いの情報を交換するため。しかしどちらもこれといった有力な情報はない。


<俺たちはもう少し詳しく調べてみる。お前はこれまで通りに動いてくれ>

『ん、りょーかい』

<それから"アレ"は持っているな?>

『もちろん。出かける時はいつも持ってるよ』

<ならいい。気をつけろよ>

『わーかってるよヅラァ』

<ヅラじゃない桂だ。…また連絡する>

『はいよ。じゃーね』


まだ犯人は特定できない、か……。桂との電話を切った後、あげはは一人ごちた。
あの四人ならばもう少しすればもっと情報を手に入れられるだろう。しかし桐島の精神的な問題がある。早急に解決したいところだ。


『…ま、あたしはあたしの役目を果たすまでさ』


焦っても仕方のないことなのだから。あげはは自分に言い聞かすように呟き、布団にもぐった。


***


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