始まりの鐘が鳴る


「おはよう、あげは」

『あ、リナリー。おはよ』


リーバーさんに呼ばれ、食堂を出て行こうとする神田の背中を見ていたらリナリーがあたしのところに来た。


「神田と食べてたの?」

『うん。といってもあたしが一方的に押しかけただけだけど』


そして結局あたしを置いて神田先にいなくなっちゃったしね。呼ばれたから仕方ないことだけど。


『それで、リナリーはどうしたの?あたしに用?』

「そうなの。実はあげはに任務に行ってもらいたいって兄さんが…」

『あー…なるほどね』


さっそく仕事ですか。探索部隊って忙しいんだね。
あたしはリナリーにお礼を言って、指示された場所へと向かうことにした。なんでもあたしに付き添ってくれる探索部隊の人が待ってるのだとか。

言われた通り地下水路まで来ると白いコートを羽織った一人の男がいた。リナリーの言っていた付き添いの探索部隊だろう。


『あのー…』

「ああ、君が紅藤さん?俺は今回同行するベネットだよ、よろしく」

『よろしくお願いします』


ベネットと名乗ったお兄さん(多分20代後半)とお互いに挨拶を交わし、もうすぐ来るらしいエクソシストを待つ。待っている間には今回の任務の説明を受けた。
行き先はスイスのとある緑豊かな村。その村の近くにある遺跡には今、触れるとどんな怪我でも一瞬で治ってしまう巨大な氷が存在しているらしい。しかもその氷はずっと溶けていないのだとか。


『…なるほど。それがイノセンスかもしれないってわけですね』

「その通り。で、俺らが調査に向かうわけ」


そしてあたしたちが行く前にも数人の探索部隊が調査に行ったらしいが、連絡がつかなくなったためエクソシストも同行の上あたしたちが派遣された、と。


「…………げ、」

『ん?………あ、神田』

「なんでテメェが」

『探索部隊としての初仕事でーす』


ゆるゆると両手を上げて万歳のポーズをとってみたら舌打ちが返ってきた。うわあ…すっごい嫌そうな顔してるわコイツ傷つく。


「紅藤さんは神田さんと知り合いだったんだね」

『あたしの友達第一号ですよ』

「冗談じゃねぇ」


あたしたちはそんな会話をしながら、船へと乗り込んだ。


***


『………精神力削れた』

「はあ?」


一般の人が乗れないような高級車両の個室。そこの座席にドカッと座り込む。まさか走っている列車に飛び乗るだなんて思ってもいなかった。
ベネットさん曰はくこれが普通なのだとか。


「つーかなんでテメェまで座ってんだ」

『ベネットさんが休んでていいよって言ってくれましたー』


本来なら探索部隊は部屋の外で立っているらしいのだが、今回は優しいベネットさんの計らいであたしも座らせてもらった。


「…足手まといにはなるなよ」

『わかってるよー。……それにもしアンタにとってあたしが足手まといになるようなら捨ててくれて構わないし』

「!」

『まあ、足手まといになんぞなる気はさらさらないんだけども』

「………」


あたしはヘラリと笑ってみせた。

その後はあたしが途中から寝てしまったため、特に会話もなく目的地に着いた。
資料に載っていた通りの緑が多く閑静な村。ベネットさんは泊まるところの確保と聞き込みのために一足早く村へと入って行ってしまった。


『神田ー…どこ行くの?』

「イノセンスを探しに行く。アクマに盗られましたじゃすまねぇからな」

『えー……じゃあ、あたしも行くかな』

「来るな」

『冷たいこと言うなよ。傷つくでしょーが』

「来るな」

『二回も言いやがった!』


スタスタと先を行く神田の後を追いかける。思いっきり睨まれたが気付かないふりでもしておこう。
新人のくせに勝手に行動しちゃってるけどベネットさんには一応連絡入れといたし大丈夫でしょ……と思いたい。

あたしと神田は一直線に例の氷があると言われている遺跡に向かっていた。
十分くらい歩いただろうか。あたしはそこであることに気付いた。


『ねえ、神田聞いて』

「あ?」

『結界装置(タリズマン)が超重い』

「知るか」

『えええええ』


一瞬振り返ったにもかかわらず神田はあたしを無視。
探索部隊の人たちっていつもこんなに重たいモン背負ってんのか。大変だなァ……あたしもだけど。


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