あたしが司令室でコムイから説明を受け、探索部隊に配属が決まったころ。ちょうど後ろの扉が開かれた。
姿を見せたのはあたしと同い年くらい(実年齢じゃなくて見た目の方ね)で長い黒髪を二つに結んでいる少女。一言で表すんならそう…。
『び、美少女……!』
「…………」
突然の美少女の登場に目を輝かせるあたしとそんなあたしを見て若干引いてる神田。その少女はあたしたちの方を見て驚いたように目を開いた。
……何だ?
「おかえり、リナリー」
あたしの方を見て固まっていた少女にコムイは声をかける。彼女の名前はリナリーと言うらしい。
「兄さん……、この子は……?」
「ああ、この子は『あたしは紅藤あげは。あげはって呼んでね?今日からここで探索部隊としてお世話んなるからよろしくリナリー!』…ちょ、僕がリナリーに言おうとしたのに…!」
コムイの言葉を遮ってあたしはソファから立ち上がり、そしてリナリーの傍まで行く。
近づいたことで気付いたのは、彼女にはその可愛らしい顔には似つかわしくない大きなガーゼが貼ってあったこと。そしてところどころ体に巻かれた包帯も服の間から見えていた。
そして足にあるのは、
『(イノセンス……ってことはこの子はエクソシストか)』
まだ幼いのに大変だなー、とどこか他人事のように考える。
リナリーは目の前に来たあたしを見つめると少しだけ悲しそうな表情をした。
「…兄さん、この子、探索部隊って…」
「彼女はね、イノセンスの気配がわかるんだ」
説明を求めるようにコムイに視線をうつしたリナリーの意志を受け取ったのか、コムイは彼女に軽く説明をした。
コムイの説明を聞くうちにどんどん表情が暗くなっていくリナリー。
『(…この子もコムイ同様優しいのか)』
だからまだ出会ったばかりのあたしにそんな表情を向けるんだね。ここのツラさをわかっているから。
『…リナリー、』
「え?……!」
あたしはリナリーの両頬を掴むと左右に軽く伸ばした。
大きな目をさらに大きくしてあたしを見るリナリー。表情はさっきとは打って変わって驚きに満ちていた。
「ちょ、あげはちゃん……!?」
あたしの突飛な行動にコムイもリーバーさんも、さらに神田までも驚いたようにこっちを見ていた。
…まあ、そりゃそうか。あたしはフッと軽く笑って、リナリーと目を合わせた。
『…せっかくこんな可愛い顔してるのにさ、俯いてちゃ勿体ないよ。リナリーみたいな女の子にはそんな顔より笑った顔の方が絶対似合ってる』
「え……、」
『って急に言われても無理か。んじゃ何か面白いこと言えよ神田』
「ふざけんな」
『神田ならできる!何のための神田なの!?その整ったイケメンフェイスは女の子を笑顔にさせるためにあるんでしょ!?さあレッツトライ!!』
「おいコムイ。コイツ斬っていいか?」
「イヤイヤイヤイヤ!神田君!?ちょっと落ち着こう!?」
「そうだ神田!六幻を置け!!な!?」
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