大丈夫だよ、なんて


あたしの嫌な予感は見事的中。
化け物と遭遇した次の日には今までお世話になったダニエルさんや孤児院に別れを告げ、神田と共に黒の教団というところに向かうことが決定していた。
やることが早すぎるんだけど。

そして列車に揺られること数時間。


『ここが、黒の教団……?』

「ああ」

『え、悪の組織に間違いじゃなくて?』


あたしの目の前にそびえ立つデカい建物。かもしだす雰囲気はまるで大魔王でも出てきそうだ。


「コムイ、連れてきたぞ」


神田は空を飛ぶ生き物(確かゴーレムと呼んでいた)に話しかけている。なんでもあれは無線機のような連絡手段なんだとか。
それにしても"こむい"って誰だ?


「……チッ、めんどくせぇな。おいあげは、」

『…………』

「…………オイ、」

『神田ってさ………あたしの名前知ってたんだね』

「最初に名乗ったじゃねェか一方的に」

『その後一回も呼ばれてないけどね』

「…そんなことより、さっさと中入るぞ」


そんな事って……ひどくね?
そう思っていたあたしを置いて、神田はスタスタと中へと入っていく。あたしもそんな神田の後を追って、黒の教団へと足を踏み入れた。


***


神田の後をついて行ってたどり着いたのはある一室。神田は躊躇いもなくその扉を開けた。


「おかえり、神田君。そして君があげはちゃんだね?」


足元に何枚もの資料が散らばっているその部屋、中にいたのは男が二人。一人はマグカップを片手に人のよさそうな笑みを浮かべ、もう一人は大量の紙を抱え目元には隈があった。


『誰?てかあたしの名前……』

「僕はコムイ。この教団で室長をやっているんだ。そしてこっちはリーバー君。君の名前は神田君から聞いたんだ」

『おお、なるほど』


さあ、二人とも座って。
コムイはあたしたちをソファに座るよう促す。あたしと神田は言われた通りそこに座った。


「さて…まずはイノセンスの回収ご苦労様、神田君。今回は怪我をしたらしいけど…」

「もう治った」


神田がそう言えばコムイは切なそうな、申し訳なさそうな、そんな顔でそっか、と笑った。


『(触れちゃ、いけないんだろうなー…)』


神田の怪我の回復の速さは異常だった。だからあたしもずっと気になっていた。
けれどこの雰囲気とコムイの表情からそのことは聞かない方がいいのだろう。


「室長、」

「うん、そうだね。本題に入ろうか」


リーバーさんの呼びかけにコムイは再び笑顔に戻るとあたしの方を見た。


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