「侍の国」 あたしたちの国がそう呼ばれていたのは今は昔の話―――…


はじめましてな眼鏡とチャイナ娘


『いやー、一ヶ月の一人旅行最高だったわー』


そう呟きながらあたしは見慣れた玄関の前に立つ。
一ヶ月前、スーパーの福引で<一ヶ月間気ままに一人旅>というものを当てたあたしは文句を言う銀時を置いていろんなとこに行ってきたのだ。


あいつなんて言うかなぁ、そう思いながら万事屋銀ちゃんの扉を開いた。


『ただいまー』

「え?」

『……え?』


出迎えるのは銀時。そう思っていたあたしは完全に虚を衝かれた。
目の前にいたのはなんとも地味そうな眼鏡の少年。


『あ、もしかしてお客さん?』

「それはあんたでしょーが!!」

『は?』


え、あたしがお客さん!?入るとこ間違えた!?
そう思って玄関から出て看板を確認するけど、やっぱりここは“万事屋銀ちゃん”だ。
でもこの少年知らないしなー。どうしたもんか。
悩んでいると奥から銀時が顔を出した。


「新八ー何やってんだ……って、あげは!?」

『よかった!間違ってなかった!!』

「え?銀さんこの人知ってるんですか!?」

「まぁな。とりあえずそんなとこ突っ立ってねーで上がれや」


銀時の言葉であたしは靴を脱いで部屋に上がった。
たったの一ヶ月と思っていたつもりだったけど、見慣れたはずのここがなんだか懐かしく感じた。
そう感じたのは旅行の間銀時がいなかったからだろうか。


「で、話を聞かせてもらおーじゃねーか、あげはよォ」


そう言った銀時は明らかに不機嫌だった。
あたしが何て切り出そうか考えていると、それを遮ったのは新八と呼ばれていた眼鏡だった。


「その前にこの人が誰なのか教えてくださいよ!銀さん!!」


眼鏡が銀時に説明を求めているので、あたしの方から自己紹介することにした。


『あたしは紅藤あげは。銀時と一緒に万事屋やってたんだけど、一ヶ月前福引で当たった旅行で今までいろんなとこ回ってた。よろしくどーぞ』

「よ、よろしくお願いします。あ、僕は…」

『地味眼鏡?』

「初対面でとんでもないこと言ってきたよこの人ォォォ!!僕は志村新八でここで働かせてもらってるんです!!」

『そうだったんだ、よろしく新八』

「…よろしくお願いします(普通にしてれば美人なのに…)」


「おい、そろそろいいだろ」


お互いの自己紹介が終わって、さっきまで存在が空気だった銀時を見れば不機嫌さが増していた。
うわぁ、メッチャ怒ってる。
新八はあたしたちの様子を心配そうに見ていたが、あたしには奥の手がある。
あたしはあるものをいくつかカバンから取り出して机の上に置いた。
それを見た銀時は驚いたように目を見開く。


「こ、これァ…」

『見ての通りあたしが行って来た場所のお土産(甘いもの)。これ全部あげる』

「マ、マジでかァァァ!!」

『機嫌直った?』

「おう!サンキューあげは!!」


「どんだけ単純なんですかアンタ」




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