疲れた時には酸っぱいものを




『ただいまー』


今月のお金がピンチな万事屋のため、金稼ぎ(ギャンブル)に行っていたあたしは靴を脱いで部屋につながる扉を開けた。

扉を開けた先の光景にあたしは固まる。
なぜなら…


銀時が見知らぬデカい犬に頭から食われていたから。


『…何?この状況?』


――――…


「定春ぅ〜!!こっち来るアルよ〜!!」


ウフフフフフ、と楽しそうに定春と戯れる神楽を眺めながら、あたしは銀時と新八からこんなことになった経緯を聞いていた。


『…まあ、神楽が楽しそうだしいいんでない?』

「お前俺たちの姿見てよくそんなこと言えるな」


銀時と新八は全身包帯だらけだった。
そこに神楽がやってくる。


「楽しそーだなオイ」

「ウン、私動物好きネ。女の子はみんなカワイイもの好きヨ。そこに理由イラナイ。ね、あげは?」

『…アレ、カワイイ?』


あたしは今こっちに向かって突進してくる定春に目を向ける。
……うん、もう少し小さかったらカワイイかもしんない。


「カワイイヨ!こんなに動物になつかれたの初めて」


そう言いながら定春に吹き飛ばされる神楽。
いい加減定春が敵意むき出しなことに気付こうか。

そんなあたしの考えをよそに神楽が語り始める。

神楽は昔、定春一号といううさぎを飼っていたらしい。


「―――散々うなされて起きたら定春…カッチコッチになってたアル」

『「「(泣けばいいのか笑えばいいのかわかんないんだけど…)」」』


神楽はその時を思い出してか、目に涙をためていた。


「あれから私動物に触れるの自ら禁じたネ。力のコントロール下手な私じゃみんな不幸にしてしまう」


でも…、と神楽は定春の頭をなでる。


「この定春なら私とでもつり合いがとれるかもしれない…。コレ神様のプレゼントアル、きっと…」


神楽が少しだけ笑った様子をあたしたちは黙ってみていた。
しかしそんな和やかな雰囲気も神楽の一言で崩れ落ちる。


「あ、酢昆布きれてるの忘れてたネ。ちょっと買ってくるヨ。定春のことよろしくアル」

「オイ、ちょっとまっ…」

『………』


あたしは嫌な予感がしてその場から静かに離れていった。
だからその後どうなったかなんて知らないから。



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