銀時と新八を犠牲に逃げてきたあたしはその辺をぶらぶらと歩いていた。 そして前から歩いてくるあまりいい印象のない服装に眉をひそめる。 「あれ、あんた確か万事屋の…」 『そーゆーあんたはこの前屋根から眺めてた奴だな?』 前から歩いてきたのは、真選組の制服を纏った少年だった。 少年はあたしの言葉に口角を上げた。 「気付いてたんですかィ?やっぱあんた面白れェや」 『そりゃどーも。用がないならあたしは行くよ』 「いいじゃねーですか。もっと話やしょーぜ」 少年の横を通り過ぎようとしたところで止められた。 『はあ?やだよ、面倒くさい』 「おごりやすぜ?」 『よし、いくぞ少年!』 まんまとのせられたあたしは少年と一緒にファミレスに入った。 遠慮せず頼んでくれと言われたので、ホントに遠慮なく好きなものを頼んだ。 『それにしてもさあ…えーと少年…』 「沖田総悟でさあ」 『"沖田"ってあんた真選組一番隊隊長じゃん』 「おや、ご存じで」 沖田はおどけてみせるが、声は冷静。食えない奴め。 「総悟でかまいやせんぜ?」 『んじゃ総悟、あたしは紅藤あげは。あげはでかまわんよ』 あたしはテーブルに置かれたケーキをほおばる。 あ、これおいしい。 「今日は旦那は一緒じゃあないんですかぃ?」 『旦那…?ああ、銀時ね。あいつは……凶暴でかわいらしいワンコと戯れてんじゃね?』 「あげは、矛盾してやす」 その後総悟とはいろいろと話した。 万事屋のこととか真選組のこととか土方さんが気に食わないこととか。 『あー食った食った。ごちそーさま!!』 「じゃあそろそろ行きやすか。土方さんに見つかったら面倒だし」 「…ほう、誰に見つかったら面倒くさいだって…?」 「……げ」 鬼の形相で現れたのは土方さん。 お客さんたち皆ビビってるよ? その後総悟が勘定を経費でおとして颯爽とファミレスから出ていった(逃げていった)。 それを追いかけていく土方さん。 一人取り残されたあたしは遠くなっていく二人を眺めながら歩き出す。 そういえば銀時たちどうなったんだろ? 今の今まですっかりと忘れていた定春の件を帰路につきながら思い出す。 銀時たち相当苦労してたなー。 『…まあ、どうせうちで飼うことになるんだろうけど』 あんなうれしそうな神楽を見た銀時が定春を手放すことなんてできるわけがない。 あたしは帰った時の万事屋を思い浮かべながら歩いて行くのだった。 (あれ、あげはさん誰とメールしてるんですか?) (んー?総悟) ちゃっかりメアド交換してた二人。 prev / next back |