自己紹介にも一苦労


土方さんに怒られて、正座するあたしたち銀魂組。
…なんかここに来てから毎回のように土方さんに怒られてる気がする。


「……で、こいつは誰なんだ?」


ひとしきり説教をした土方さんがあたしの方を見る。
それに頷いて、あたしは説明を始めた。


『えー…こいつは高杉晋助。あたしたちの幼馴染で……えっと……あー…その…』

「?言いたいことがあるならはっきり言えよ」

『…じゃあお言葉に甘えて。こいつは江戸で一番危険視されてる攘夷志士です』

「はっきり言い過ぎだ貴様」


小太郎があたしの頭を軽くたたいて注意したが、時すでに遅し。あたしの言葉に新選組の皆が警戒を強める。
当の本人は相変わらず余裕そうな笑みを浮かべていた。

見かねた小太郎がすかさずフォローを入れる。


「安心しろ。こいつに攘夷活動はさせまいよ。俺が保証しよう」

「何勝手に決めてやがる」

『あんたここで攘夷活動してなんか意味あんの?』

「………」

『ないんじゃん』


あたしは晋助が攘夷活動する気がないとわかると、改めて新選組の方を向いた。


『大丈夫です、土方さん。こいつに攘夷の意志は今んとこないらしいんで。ただの中二病患者だと認識してくれれば……痛いっ』

「誰が中二だ」


「なあ、土方さん。ちゅうにびょうってなんなんだ?」

「さあな。高杉はなんかの病気なのか?」


そんな声が聞こえてきたので、あたしが教えてあげようと口を開きかけたところで晋助に睨まれた。その上、抜刀しかかっていたのでここは大人しくしてようと思いました。…あれ、作文?


「俺ァ病なんぞ患っちゃいめぇよ。この馬鹿が言うことは気にすんな」

『馬鹿って言うな馬ー鹿』


再び睨み合うあたしたちに土方さんがため息を吐いたのが分かった。


「…ったく。俺たちにも自己紹介くらいさせてくれ…」

『あ、そうだった…。もうほとんどの人空気になりかけてるもんね』

「あげはちゃんたちが喧嘩するからだけどね」

『あれ、総司が笑顔のはずなのに直視したくないのはなんでだろう…』


あたしは嫌な悪寒を打ち消すように体をさすった。
絶対総司キレてる…!怖っ!!

…て、ん?自己紹介?


『こここ小太郎!!』

「こここ小太郎じゃない桂だ」

『黙れ馬鹿!!…じゃなくて!あたしたち晋助にここが新選組ってこと言ってない!!』


あたしは晋助に聞こえないよう小太郎にそっと(?)話しかける。


「そういえば言ってないな。だがまあ、平気だろう」

『そーかな…?』

「安心しろ、あげは。高杉もそこまで馬鹿ではないよ」

『…うん』


確かにそうだ。晋助は今では攘夷なんてやっているが、元は裕福な家柄。そのせいか礼儀や作法も昔はしっかりしていた。それがあたしたちに向けられたことは一度もないけど。


 



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