喧嘩は放っておくのが一番


全員が晋助を見つめる中、一人刀に手をかけ立ち上がった者がいた。
小太郎だ。


「高杉!?貴様何故ここに!?」

「ククッ、さァな。どちらにせよお前さんにゃ関係ねー話だ」

「次に会ったら斬ると言ったはずだが?」

「できるもんならやってみろよ」


ごくり、
誰かの息をのむ音が聞こえた。
二人の殺気は尋常じゃない。その上普段バカなことばかりしている小太郎が殺気を放っているのだから当然だろう。
彼らはお互いに睨み合い、今にも斬り合いが始まりそうだ。
あたしはそんな二人を横目に千鶴が入れてくれたお茶をすすった。


「いや止めろよォォォ!!」

『!?』

「なんでそんな驚いた顔してんの!?」


お茶を飲んでくつろぐあたしに平助が叫ぶ。
周りを見ると新選組の皆があたしに視線を向けていた。
どうにかしろということだろう。
どうにかしろと言われてもなー。あいつら止める方法なんて………よし。


『おい、ヅラ!ちび助!』

「「!!」」


睨み合っていた二人が動きを止めた。
同時に冷めていく空気。新選組一同があげは死んだんじゃね?とか思うほどに。


「貴様…」 「てめぇ…」


二人は刀を抜いてあたしの方を向き、


「ヅラじゃない桂だァァァ!!」 「誰がちび助だァァァ!!」


思いっきり刀を投げてきた。


『ぎゃあああああああ!!』


あたしは間一髪で二本の刀をよけた。


『ちょ、何すんだてめーらァァァ!!』

「俺ァちびじゃねえと何度言ったら分かる。第一てめーよかでけーよ」

『女子と比べる時点で間違ってんだよ』

「安心しな、俺はてめーを女とは見ちゃいめェ」

『んだとコラ』


今度はあげはと高杉(と呼ばれていた男)が喧嘩し始める。
新選組は完全に蚊帳の外だ。


「土方さん、あげはちゃん喧嘩始めちゃいましたよ?」

「なんで喧嘩止めようとしてた奴が喧嘩始めてんだよ…」

「しかし副長、このまま放っておくのも…」

「部屋が潰されそうだもんなあ…」

「新八っつあんの言う通りだぜ土方さん!」

「というか、あの二人躊躇いなく刀投げたな…」

「あげはさん大丈夫でしょうか?」

「仕方ない、俺が止めに行こう」


こそこそと話す新選組。
上から沖田、土方、斎藤、永倉、藤堂、原田、千鶴、桂。


「「「「「「「!?」」」」」」」


いつの間にか隣に来ていた桂にバッと振り向く。
桂はそんなことなど気にせず、あげはたちの方へ歩いて行った。
そして…


「おい、貴様らその辺でやめ…『死ねよちび』…おいやめ…「てめえが死ね男女」…やめろと…『「上等だコラ」』……やめなさいって言ってるでしょ!?」

『「………」』

「何度言ったらわかるのあんたたちは!!お母さんそんな風に育てた覚えはありません!!」


腰に手を当ててプンスカと怒る桂。
新選組はいやいや、その止め方はないだろう…と内心思う。お母さんて…。

あげはと高杉は一瞬固まった。が、すぐに言い返す。


「てめえの出る幕じゃあないんだよ」

『母親は黙ってな』

「なんだと貴様らァァァ!!」


そして止める役を買って出たはずの桂まで二人と睨み始めるという始末。
てか、


「お母さんってところは否定しないんだな…」


原田の言葉に全員が頷いた。

結局この後土方さんがキレ、ようやっと三人は落ち着いたのだった。



(晋助のせいで怒られたじゃん!)

(あ?もとはと言えばヅラが…)

(ヅラじゃない桂だ!!)

(いい加減にしろてめーらァァァ!!)


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