喧嘩は放っておくのが一番


あの後、般若を背負っている総司をなんとか宥めて晋助と総司と並んで歩く。
途中で大事な事に気が付いた。


『あ…猫』

「「猫?」」


首をかしげる二人に、そう、猫と言ってあたしが屯所から出ていった経緯を説明する。
それを聞いた総司が、ああ、と相槌をうった。


「だから桂さんがずっと猫とか肉球って呟いてたんだね」

『あいつ猫…ってか肉球大好きだから』

「鬱陶しいくらいにな」


あたしの言葉に晋助が同意した。


『まあそーゆーわけであたしはその黒猫を捜さなくてはならないのだよ』

「でも黒猫なんてたくさんいるよ?」

『大丈夫。見ればわかるから』


総司が意味が分からなそうにしていたがそこはスルーした。

とりあえず別れて探そうと提案しようとしたところで晋助が隣にいないことに気付く。
あたしたちついさっきまで話してたよね?
総司と話してた一瞬でいなくなるってどーゆーこと!?
あたしがきょろきょろ辺りを見渡していると総司があっ、と声を上げた。


「いたよ、あの人。派手な着物だからすぐわかるね」

『あいつあんなとこで何してんの』


晋助はこちらに背を向けてしゃがみこんでいる。
しばらくすると立ち上がってこっちに来た。


「猫が髪紐くれた」

『何故!?…ってそれ千鶴の!!』

「ちょうどよかったじゃねェか」

「その前に猫からもらうっておかしくない?」


珍しく総司からツッコミがはいる。
あたしもそう思うよ。
何なのこいつ。この小説ではボケるの?原作キャラをぶっ壊していくの?

…まあ結果オーライか。
千鶴の髪紐も無事戻って来たんだし。
あ…そういえばまだ捜しに来てくれた総司に何も言ってなかった。
あの時走ってたみたいだから心配してくれたのだろう。……怖かったけど、背中に般若背負ってたけど。


『総司、勝手に屯所抜け出してごめん』

「………無事ならそれでいいよ」


デレた。総司顔真っ赤だよ。
そっぽを向く総司に心配してくれてありがとう、とお礼を言ってあたしたちは屯所に向かった。

――――


「あげはさん!」



屯所について一番に出迎えてくれたのは千鶴だった。
あたしは千鶴の頭をなでながら、髪紐を渡した。


『はい、千鶴。待たせてごめんね?』

「そんなことないです!ありがとうございました!!」


ぺこり、と頭を下げる千鶴。
可愛いなチクショウ!


「…女好きなのは変わってねえなァ、あげは」

『バカヤロウ!あたしは可愛い子が好きなだけだ』

「同じだろ」


「(やっぱり男に見えないのかな…)」


あっさりと高杉に男装を見破られた千鶴は密かに落ち込んでいた。
当の本人たちはそんな彼女の様子に気付いていないようだ。


「(それにしてもきれいな人だなあ)」


千鶴は高杉を見て素直に思った。
誰だがよくわからないが、あげはさんと話してるのを見る限り二人は仲が良さそうだ。

千鶴の視線に気が付いたのか、あげはが少し困ったように口を開く。


『あー…千鶴、こいつのこと説明したいから土方さんに伝えてくれる?』

「あ、はい!」


千鶴が行った後、あたしたちも中に向かう。



『うし、気合い入れていくか』

「気合い入れる必要ある?」


総司に聞かれて、あー…うん、まあね、とごまかす。
晋助は攘夷志士の上、小太郎と仲悪いからなー。絶対面倒くさいことになるのは目に見えてる。

千鶴に幹部の皆を部屋に集めてもらって(ちなみに近藤さんと山南さんは留守だった)、総司が先に部屋に入る。
続いてあたしと晋助が部屋に入った。


 



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