確証のない迷信は信じない方がよい


――――


『………ま』


迷ったァァァアアア!!
ヤバいヤバいヤバい!!どれくらいヤバいかっていうとマジヤバい!!
どーしよ、帰り道まったくわからん!!

黒猫を捕まえようと意気込んでいたあたしだが、思い返してみれば屯所から出たことって皆無じゃん。
そりゃ迷うわ!!

とりあえず黒猫を捜すため歩き回るが、一向に見つからない。

町の人たちにも聞きまわってみるがやっぱり見つからない。


『はぁ……』


ため息を吐いてその場に座り込む。
しばらくそうしていると、


「にゃあ」


猫の声がした。


『!!』


バッと顔を上げると、あの黒猫があたしの前を横切っていた。
しっかりと千鶴の髪紐をくわえている。

あたしの視線に気付いたのか、黒猫もこちらを見る。
見つめ合うこと数秒…


『か、覚悟ォォォ!!』


ひらり


『んぎゃ!!』


黒猫を捕まえようと飛びかかってみたが、さっき小太郎が飛びかかった時同様軽やかにかわされてしまった。

そしてまた逃げ出す黒猫。


『何これ…エンドレス?』


道に迷ったあげく、またも猫を逃がすとはホントついてない。

あたしはため息を吐いて、猫の逃げた方へ向かって歩き出す。


それから見つけては逃げられ、見つけては逃げられの繰り返し。
さすがのあたしも疲れてきた。

この世界に来てからあんまり体動かしてないから、確実に運動不足になりつつある。
あたしは息を整えるため、一回立ち止まった。


『はあ…』


どん、


『あ、すいません………は、』


下を向いていたため誰かにぶつかってしまったらしい。
謝ってから顔を上げたあたしはそのまま固まった。
いや、動けなかった。

だってあたしの目の前にいたのは、

女物を思わせるような蝶が舞う紫の着物。手には煙管。先生を奪った世界を恨んだ隻眼の男。


「………あげは、か?」


袂を分かったはずの幼馴染、高杉晋助だったのだから…。



あたしは晋助から目が離せなかった。
遠くから黒猫が見ていたのにも気づかないくらいに…。



((なんで今日に限ってこんなに運が悪いんだろう…))


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