真剣勝負って何だっけ


竹刀を持ち直したあたしは真剣に総司と戦いを始める、ことはなかった。
なぜなら…


「いきなり何をするんだ貴様はァァァアア!!」

『フガッ!』

「エエエェェエエ!?桂さんまで何やってんのォォォ!?」


小太郎があたしの後頭部に向かって竹刀を投げつけてきたからだ。
竹刀が直撃したあたしは頭を抱えてしゃがみこむ。
痛い!これは痛い!!頭へこんだんじゃねコレ?むしろ穴開いてんじゃねコレ?


「ちょっと桂さん、邪魔しないでよ」

「その前に女に向かって今のはどうなんだ?」

「フン、自業自得だ」

「あげはさん大丈夫ですか!?」


総司と左之さんが小太郎と言い合いをしている間、あたしの様子を心配した千鶴がこっちまで走って来た。
あたしは焦る千鶴に、大丈夫だよ、と頭を撫でてから竹刀を拾った。
そしてゆっくり標的の方まで歩いて行く。

そして…


『ヅラァァァ!!テメー何しやがるんだコノヤロォォォ!!』

「ヅラじゃない桂だァァァ!!貴様が先にやってきたんだろうがァァァ!!」


あたしと小太郎の戦いが幕を開けた。

きっとここに銀時とかがいたら昔からのことだからと呆れたように見てるんだろうけど、隊士たちを含む薄桜鬼側の皆(特に幹部たちはあたしが女だと知っているので)にとっては見慣れない光景らしく(当たり前)、呆然とあたしたちを見ていた。


「なあ、土方さん。あれどうするんだ?」

「知るか!なんであいつらが戦い始めるんだよ!!」

「でもなんかあの二人すごくね?」

「やっぱあげはちゃん強いよな!」

「うむ。やはり手合せしたいものだ」

「あげはさんかっこいいです!」

「僕と戦ってたはずなのになあ」


上から、
戸惑った様子の左之さん。
明らかに怒っている土方さん。
もはやあたしたちに感心してる平助と永倉さん。
その言葉にうなずく一君。
目が輝いている千鶴。
少し拗ねている総司。

しかしどの声もあたしたちには届いていなかった。
あたしたちはあたしたちで、やれその髪とれ!だのやれ鬘じゃない地毛だ!だの、他人から見ればなんともくだらない言い争いを繰り広げていたからだ。

そして、いい加減にしろ!!、と土方さんに怒られるのはこの10分後。
そこから正座をさせられて、疲れと足の痺れであたしたちが崩れ落ちるのは1時間後。



(……あんま過去の話しないでよね)

(…すまん)

(こっちもやりすぎたとか思ってるけどさ)

(そうか……ところで足が痺れて動けないんだが)

(……同じく)


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