真剣勝負って何だっけ


――前回のあらすじ――
新選組幹部と手合せをすることになったあたしたち。
あたしは総司と、小太郎は永倉さんと。
あたしの訴えも空しく、土方さんの合図であたしと総司は同時に地面を蹴った。

バシィッと二人の竹刀がぶつかり合う。


『…ッ!』

「…へえ、これを片手で受け止めちゃうんだ」


総司が楽しそうに笑う。
正直片手で受け止めるんじゃなかった、と絶賛後悔中だけどね!!
さすが沖田ってだけあって強い。

あたしは竹刀をはじいて一旦距離をおく。
後ろでは皆が驚くように話しているのが聞こえた。


「すげーなあげはの奴。総司の攻撃を片手で受け止めるなんて!」

「当たり前だ。伊達に異名をつけられているわけではないからな」

「異名…?」


平助の感心したような言葉に小太郎が答えた。
あいつ余計なこと言いやがって!左之さんがあたしの“異名”に興味を持ち始めてるじゃないか!!
そういった文句を込めて、小太郎に向かって思い切り竹刀をぶん投げる。


『そいやっ!!』

「ゴフゥッ!」

「エエェェェエエ!?桂さんんん!?お前何やってんのォォォオオ!!」

『…………うっかり?』

「うっかりって何!?」

『細かいことは気にすんな、ちび助』

「平助ェェェ!!」

「桂さん生きてるか!?おい桂さん!?」


永倉さんが駆け寄ってきて、小太郎に話しかける。
返事がないただの屍のようだ。

あたしがその様子を黙って眺めていると、後ろから何かが振り下ろされるような気配がした。
咄嗟に避ければ総司が竹刀を今まであたしがいた位置に振り下ろした。


『なっ…何すんの!?総司ィィィ!!』

「今は僕との勝負中でしょ?あげはちゃん」

『だからって今のは死んじゃうからね!?』

「じゃあ死なないように集中してよ」


そう言って彼はまたこっちに向かってくる。
そこであたしは重大なことに気付く。
今竹刀持ってない、と。


『あれ、竹刀どこだっけ…』

「ここォォォ!竹刀ここォォォ!!」


聞こえてきた声の方を見ると平助が竹刀を持っていた。


『なんであんたが持ってるわけ?』

「あげはが桂さんに向かって投げたからだろ!?」

『あ、そうだった』


総司の攻撃が衝撃的過ぎてすっかり忘れてた。
左之さんが、いいのか?こんな扱いで…、と小太郎に憐みの視線を向けていたが今はそれどころじゃない。
急いで平助から竹刀を受け取って総司の方を見た。


 



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